アニメ『機動戦士Zガンダム』の主要キャラクターの1人であるパプテマス・シロッコは、非常に多才な男として知られる。木星圏から地球圏へ「ヘリウム3」などの重要資源を運ぶ木星船団を率いたことから「木星帰りの男」とも呼ばれていた。
そんなシロッコは優れた指揮官でありながら、高いニュータイプ能力を持つ天才的なパイロットでもある。
そして驚くべきことに、シロッコは数多くのモビルスーツの設計や開発にまで携わっている。中でもシロッコが自らの搭乗機として開発したモビルスーツ「ジ・O」は、劇中の最終決戦時の機体として記憶に残っているファンも多いことだろう。
いかにも鈍重そうなモビルスーツに見えて、実は圧倒的な機動力を秘めていたジ・O。カミーユ・ビダンのZガンダムやクワトロ・バジーナの百式、ハマーン・カーンのキュベレイなどと互角以上の戦いを繰り広げた。
最終的にカミーユのZガンダムによって倒されるものの、そこに至るまで目立ったダメージを受ける場面すらなく、シンプルな武装ながら非常に高性能な機体として印象づけた。
設計したシロッコが退場したことでジ・Oの系譜は存在しないかと思いきや、実は外伝作品やゲームなどには彼の構想も含むジ・Oの派生機や発展機が多数登場する。そこで今回は、木星帰りの天才が関係するジ・Oのバリエーションについて掘り下げてみたい。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■統治者の象徴となるはずだった「妖精の女王」
1998年に発売されたゲーム『SDガンダム GGENERATION』(バンダイ)から登場するゲームオリジナル機体「タイタニア」。同機の形式番号はPMX-004で、PMX-003であるジ・Oの発展機という位置づけになる。
ウィリアム・シェイクスピアの戯曲に登場する妖精の女王「ティターニア」から命名され、ずんぐりとしたフォルムだったジ・Oと比べるとかなりスリムで、どちらかというと女性的なシルエットに見える。
そこには「ニュータイプの女性が世界を統治する」というシロッコの思想が込められ、新たな統治者の乗機となるべく構想された機体だった。
シロッコの設計したジ・Oの発展機だけあって、タイタニアが秘めたポテンシャルは相当高く、サイコミュまで搭載。ニュータイプ専用の無線攻撃端末「ファンネル」を装備する。また、ジ・Oの特徴でもあった「隠し腕」は4本に増え、6本の腕それぞれにビーム・ソードを持たせることも可能だ。
このタイタニアにふさわしいニュータイプのパイロットが搭乗すれば、ジ・O以上のパフォーマンスを発揮したかもしれないが、残念ながら開発前にシロッコは戦死。開発は中止されたため、残念ながらゲームの中でしか完成した姿を見ることはできない。
■「妖精王」の名を冠したジ・Oのガンダムタイプ!?
葛木ヒヨン氏によるコミック『機動戦士ガンダム ヴァルプルギス』(KADOKAWA)には、「オーヴェロン」と呼ばれる白いジ・Oが登場する。
同機はシロッコがタイタニアと並行してジ・Oに次ぐ戦力として開発していた機体で、シェイクスピアの戯曲『真夏の夜の夢』にも登場する妖精王「オベロン」の名をとっている。
ただし白いジ・Oの外装は、あくまで偽装装甲であり、その中に隠されたオーヴェロンの本体は、ガンダムそのものの外観をしている。劇中でも、実質的にジ・Oのガンダムタイプと呼ばれている。
タイタニアと同じくシロッコの戦死に伴い、オーヴェロンの開発も中止されたが、彼の設計をもとにアナハイム・エレクトロニクス社が完成させた機体である。
オーヴェロンの最大の特徴は「グリモア」と呼ばれるシステムを搭載している点にある。このグリモアを持つ機体は、Zガンダムがシロッコのジ・Oを行動不能にした機体制御を抑制する謎の現象を再現する。
劇中でオーヴェロンは、同じ「グリモア」を搭載するキュベレイの発展機「ディマーテル」などと激戦を繰り広げた。


