■“武闘派令嬢”が拳でスカッと悪を成敗!『最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか』

 次にピックアップするのは、鳳ナナ氏のライトノベルが原作のアニメ『最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか』。同作はパリスタン王国の公爵令嬢スカーレット・エル・ヴァンディミオンが、己の拳を武器に悪徳貴族たちを成敗していく痛快ファンタジ―作品だ。

 幼い頃から人を殴るのが好きで、「狂犬姫」と呼ばれていた主人公のスカーレット。第二王子カイル・フォン・パリスタンの婚約者になってからはおとなしくしていたが、舞踏会の最中に一方的に婚約破棄を伝えられたうえ、身に覚えのない罪まで着せられる。

 ここまでは通常の悪役令嬢モノでよく見る展開だが、スカーレットは「最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか」とていねいに許可を得た直後、自分を陥れた舞踏会の参加者を次々と殴り飛ばしていく。拳を振るうと見せかけて、背後の壁を殴って相手の心を挫く展開はよくあるが、スカーレットの場合は、生身の人間を殴って殴って殴りまくる。

 この豪快な幕開けこそ本作の最大の魅力であり、事件をきっかけにヒロインのスカーレットは「鮮血姫」もしくは「撲殺姫」との二つ名で呼ばれることとなる。

 SNSでも「この女、イカレてやがる…」「とんでもねえ幕開けだなおい」「タイトルからは想像できない」といった声が多く見られ、あまりにも型破りな主人公像と、ジャンルの枠を豪快に飛び越えた爽快感抜群の作風で高い評価を得た。

■攻略対象が悪役令嬢の百合ラブコメ『私の推しは悪役令嬢。』

 最後に推したい作品は、2018年から小説投稿サイト『小説家になろう』などで連載されていた、いのり。氏によるライトノベルが原作のアニメ『私の推しは悪役令嬢。』だ。同作は乙女ゲームのヒロイン・レイ=テイラーに転生した社畜OLの大橋零が、ゲーム内の推しだった悪役令嬢・クレア=フランソワに猛プッシュをかけるガールズラブコメディである。

 通常は乙女ゲームの世界のキャラに転生した後、攻略対象の王子たちとの恋愛模様が描かれることが多いが、本作の主人公は、自身の「最推し」であるクレアを全力で愛し続ける。この奇抜な設定にはSNSでも「令嬢には転生しないんだ(笑)」「恋するのそっちかよ」と多くの驚きの声があがった。

 ストーリーは、クレアから嫌がらせを受けても、喜びに変えてしまうレイの一途すぎる愛情表現を軸にしたコメディ路線を突き進む。レイは、クレアにボディタッチをしようとしたり、いびられて歓喜するドMっぷりを見せたりと、通常の悪役令嬢ジャンルでは見られない展開が笑いを誘う。

 またレイの目的は、前世でゲームをやり込んで得た知識を武器に、クレアが幸せに生きられるように立ち回ることであり、愛ゆえの奮闘ぶりも見どころ。

 最初は一方的に見えるレイの好意が、次第にクレア自身にも影響を及ぼしていくことになる。悪役令嬢モノというジャンルに、「百合要素+推し活」という視点を取り入れたという意味で、人気ジャンルの新たな可能性を示した作品といえるだろう。

 

 多彩な進化を見せている昨今の「悪役令嬢」ジャンル。今回紹介した作品はいずれも異色の切り口から新たな魅力を生み出し、従来のジャンルのイメージをくつがえす独創的な設定で人気を集めた。定石とは違う驚きや爽快感を味わいたい人は、ぜひチェックしてみてほしい。

 

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私の推しは悪役令嬢。(1) (百合姫コミックス)
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