■冷淡に見えて実は愛情深い人物
すでに書いたように、ギンの行動原理は乱菊の存在にある。乱菊が奪われてしまったものを取り返す──ただそのためだけに、藍染を倒すと心に誓った。
そして、そこまでの覚悟を決めながら、直接乱菊にその想いを伝えることはなかった。しかし、乱菊に対して別れの言葉とともに「ご免な」と告げたときの表情には、彼の本心がにじみ出ていたように思える。
この彼が秘めた感情も大きなギャップの1つだろう。当初は不気味でつかみどころがなく、冷淡な印象を受けた人物だったが、その裏に隠していたのは乱菊に対する深すぎる愛情だ。これまでの行動の意味がすべてひっくり返った“種明かし”は、多くの読者の心を揺さぶっただろう。
結局、万全の準備を重ねたにもかかわらず、ギンは藍染を倒すことができなかった。しかし、そこに駆けつけた一護の姿を見て、彼は「強い眼になった」「今のキミになら 任せて 殂(い)ける」と安心して息を引き取るのだ。
乱菊の幸せが守られるのであれば、彼女の隣にいるのは自分でなくても構わない。そんな究極の愛情のかたちを見せつけられては、その生きざまに惚れずにはいられない。同時に、残される乱菊のことを思うと、「もっと別の道もあったのでは……」と、考えても仕方がない“もしも”の世界を想像してしまう。
自身の大切な存在を守るため、偽りの自分を演じ続け、周りを欺いてきたギン。その悲しくも美しい彼の生きざまは、退場してから長い時が経った今もなお、多くのファンの胸に刻み込まれている。
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