人気ブロガーのかんそうさんが毎週1回『ふたまん+』にてお送りする、ドラマへの熱い“感想”。今回は、先日配信がスタートしたばかりのドラマ『クロエマ』。杉咲花&多部未華子のW主演で、女性2人が織りなす奇妙な共同生活を描く本作の「ヤバイ中毒性」を【ネタバレなし】でつづります!
6月12日からプライムビデオでの独占配信が開始されたドラマ『クロエマ』。今泉力哉監督が手がける作品という時点で「しゃらくさい人間関係」の匂いがプンプンする予感はあった。
しかし今回はそれを、恋愛から一歩引いた「女同士の共同生活と探求」に置き換えて、超濃厚エキスに煮詰めている。原作は海野つなみの漫画作品。彼女の描く、日常の隙間に潜む不気味さと優しさが、今泉の解像度バカ高い会話劇と重なって、予想以上に化学反応を起こしている。
この『クロエマ』は、無職・家なしで人生崖っぷちのエマ、 そして資産家で占いを得意とするクロエという2人の女性の物語だ。
エマとクロエのテンポの良い掛け合い、価値観の違いから生まれるズレ、占いの店での予測不能な客とのやり取りが、思わず笑ってしまう軽快さとユーモアに満ちている。事件らしい事件はほぼない。占いの店を訪れる客の相談は、表向きの悩みと裏側の本当の問題がずれていて、エマとクロエがそれを占いを手がかりに探っていく。でも全部がスッキリ解決するわけじゃない。むしろ、解決したと思ったらまた別のモヤモヤが生まれる。
ひたすら対話と間と、視線と、沈黙で心理をえぐってくるスタイルは今泉力哉そのものだ。ドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』(日本テレビ系)に続く「観るかっぱえびせん」第二弾である。
まず多部未華子が演じるクロエが、異様に魅力的だ。謎めいた資産家という設定そのままに、余裕たっぷりでどこか冷めていて、でも時折見せる柔らかな表情の落差がたまらない。
眠たげな目元でエマの言葉をじっと受け止める仕草、占いの最中の異様なオーラ、すべてが「この女、底知れない」と背筋をぞわっとさせる。冷静沈着そうに見えて、ヤバい。だがその一方で、話が進むごとにお茶目な一面がどんどん見えてきたりもする。そんな多部未華子の持つ透明感と影のバランスが、クロエというキャラクターを完璧に体現している。
対する杉咲花演じるエマも、可愛すぎてヤバい。恋も仕事も家も失った30歳女性という、人生リセット強制状態からクロエの屋敷にたどり着き、ひょんなことから同居&占い店開業。破綻具合が最高に人間くさいのに、彼女の可愛さが全てを吹き飛ばす。コロコロ変わる表情の豊かさは、毎週これを堪能したくて見たくなるレベル。
この2人の関係性が、本作の最大の沼ポイントだ。対照的な性格の2人が一緒に暮らして、占いの店を切り盛りする。最初はただの同居人みたいな距離感が、客の相談を通じて少しずつ形を変えていく。クロエの余裕がエマの不安定さを包み込み、エマの生々しい感情がクロエの殻を溶かしていく。恋愛ドラマではないのに、女同士のこの距離感が妙に色っぽくて、ときどきドキッとする。
今泉力哉の演出は今回も見事としか言いようがない。エマのダメさや弱さ、クロエの計算高さと優しさの狭間を、解像度高く丁寧に描き切る。女同士の関係だからこそ出てくる、利用と依存と、純粋なつながりの混在が痛いほどリアルで、でもどこか愛おしい。「この2人が好きだ」と自然に思ってしまう。共感と憧れと、どこか自分を重ねてしまう感覚が交互に来て、観終わったあと頭から離れない。
この「主演を魅力的に描く力」こそ、今泉監督の異常な才能だ。
暮らしたい。許されるのであればこの二人と一緒に暮らしたい。いや、俺のことなど絶対に認識しないでもらいたい。絶対に2人からは目に入らない絶妙な距離から見守っていたい。岩瀬洋志が演じる下門(しもん)という2人の近くにいる男がいるのだが、悔しくて仕方がない。ドラマの登場人物に対して「そこを変われ」と本気で思ったのは久しぶりだった。
多部未華子と杉咲花の人間くさくて魅力的な佇まいが、すべてを愛おしく、すべてを深くさせる。原作の海野つなみが紡いだ物語に、今泉力哉が現代的な心理描写を注入し、二大女優が魂を吹き込んだ。結果として生まれたのが、この奇妙で中毒的な『クロエマ』だ。
一度見始めたら抜け出せない。エマとクロエの関係に振り回されながら、「自分だったらどう生きる?」と自問自答する羽目になる。一度沼に落ちたら、もう一生この2人の時間に浸かりたくて仕方なくなる。
頭おかしくなるドラマ、堂々の完成である。
『クロエマ』、全力でオススメしたい作品だ。
■著者プロフィール
かんそう
ブロガー・ライター・作家。北海道の片隅で意味不明な文章を綴る長男。
著書に『書けないんじゃない、考えてないだけ。』『推すな、横に並んで歩け』がある。
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