政界を追い出された星野茉莉(黒木華さん)と元スナックママ・月岡あかり(野呂佳代さん)の運命的な出会いから始まったドラマ『銀河の一票』(フジテレビ系)。
現在ではふたりのそばに心強い仲間が続々と集まり、あかりが出馬した都知事選に向け準備を進めている状況だ。そんな中、第8話ではレジェンド声優の日髙のり子さんが登場。その役どころは、老若男女から愛される人気声優・白鳥光留である。
レジェンド声優が声優役を演じるという粋なキャスティングや日髙さんの名演技に対してはもちろん、数々の名作アニメを彷彿とさせる遊び心あふれる演出にも、SNSでは大きな反響が寄せられた。
※本記事には『銀河の一票』第8話までの内容を含みます。
■声優の“声”を取り上げた感動回で日髙のり子さんが熱演
「チームあかり」からウグイス嬢を依頼された光留。しかし、彼女たちの元を訪れた光留は、あかりが掲げる公約「8つの安心」に感動しつつも、「声が出ないから仕事ができない」という辛い事実を打ち明けた。
その原因は、生成AIに自分の声を無断で学習させられ、しかもそうして生み出された朗読に「命」を感じてしまったことだという。現実でも昨今、声優の津田健次郎さんが生成AIによる自身の声の無断模倣に関して裁判を起こすなど、「声の権利」は大きな問題となっている。声優にとって、人生をかけて磨き上げてきた声を奪われる苦しみは計り知れない。
本作には、AI企業の社長・風間藍生役として人気声優の梶裕貴さんも出演している。梶さんは、ドラマ内で声優の身に降りかかっている問題を取り上げたことに対し、放送後に「まさか我々、声優の気持ちまで掬い上げてくれるとは」と公式Xでコメントを残している。このように、選挙というテーマを通して、現代のリアルな社会問題へ斬り込む姿勢もまた、『銀河の一票』が人気を集める理由の1つかもしれない。
そんな光留の心の痛みを、日髙さんは「本当に声が出なくなってしまったのではないか」と錯覚させるほどのリアルな演技で表現してみせた。たどたどしく今にも消えてしまいそうなかすれ声には、光留の苦悩だけでなく、声を仕事にする人々のやるせなさや悲しみが滲んでいるかのようだった。
そんな迫真の演技に驚く一方で、心の傷を抱えつつもお茶菓子を前にした「いただきます」の声には、変わらない可愛らしさが詰まっていた。作中の茉莉たちだけでなく、視聴者の心をも一瞬で掴んでしまうその表現力こそが、日髙さんの凄さなのだ。
それもそのはず、日髙さんはもともと芝居の世界を志し、芸能界へと足を踏み入れた。その後、ドラマ出演やアイドル活動のなかでその魅力的な声が見いだされ、声優としての才能を開花させていったのである。声だけでなく仕草や表情でも繊細な感情を表現できる能力は、こうした歩みを重ねながら培っていったものなのだろう。
■ファンが思わずニヤリとする仕掛けも
さらに第8話には、光留が声優を務める作中の人気アニメ『ふるるんくっか!』を通して、日髙さんが長年築き上げてきたキャリアへの敬意を感じさせる出演作へのオマージュが数多く散りばめられていた。
ちなみに、フルルンの仲間であるクッカはこれまたレジェンド声優の冨永みーなさんが演じている。「元気!勇気!花よ咲け!」というわずかなシーンにも関わらず、日髙さんと冨永さんの掛け合いが見られるとは、どこまでも豪華なエピソードだ。
アニメファン胸熱の演出に呼応するかのように、作中のちょっとしたセリフにも心くすぐる仕掛けがされていた。例えば茉莉が興奮気味に口にした「『ジェリービーンズの冒険』のジェリーの声の方」は、多くの子どもたちを夢中にさせた世界名作劇場『ピーターパンの冒険』のピーターパンを思わせるもの。
このピーターパンは、『ふしぎの海のナディア』のジャンや『るろうに剣心』の瀬田宗次郎など、印象的な少年役を数多く演じている日髙さんが、初めて本格的に挑戦した少年役としても知られている。
それに続き、チームあかりが次々と口にしたのが『はす向かいのピロロ』のやよいちゃん、『がんも8/100』のひつじちゃん、『キャッチ』の東ちゃんである。言わずもがなだが、『はす向かいのピロロ』は『となりのトトロ』のサツキ、『がんも8/100』は『らんま1/2』の天道あかね、『キャッチ』は『タッチ』の浅倉南へのオマージュだろう。
個人的には南ちゃんに対する東ちゃんというネーミングに思わず笑ってしまったが、どれも日髙さんの代表作を知るファンならニヤリとしてしまうものばかり。おもしろさのなかに作品への愛情を感じさせる絶妙なもじり方は秀逸で、制作陣の遊び心が光っている。放送後のSNSには、「オマージュが絶妙でおもしろい」「斜向かいて、微妙に遠めだな!」「さすがに笑った」といった声が続々と寄せられた。
クスッと笑えるネタを散りばめながらも、ラストでは光留がチームあかりの前で何らかの言葉を発し、皆が飛び跳ねて喜ぶというシーンが無音で描かれ感動を呼んでいる。あえて無音で見せることで、自分の声を取り戻した光留の晴れやかな心がより強く印象付けられるこの演出には、多くの人々から「泣けた」という声も寄せられていた。
長年にわたり、数々のキャラクターたちに命を吹き込んできた日髙さん。今回のエピソードは、そんな彼女の歩みと声優を生業とする人々への敬意、そして“声”というかけがえのない財産の重みを改めて感じさせるエピソードだった。
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