■飲むと魂が抜け出して幽霊に!?「うらめしドロップ」
コミックス第29巻の「ユーレイ暮らしはやめられない」に登場する「うらめしドロップ」は、使用者自身が幽霊になるという一風変わった道具だ。
ジャイアンに恨みを晴らすため、「自分が死んだら化けて出てやる!」と息巻くのび太に対し、ドラえもんが“死なずに化けて出る方法”として取り出したのがこのドロップである。これを飲むと肉体から魂が抜け出し、一時的に本物の幽霊になれるのだ。
さっそく幽霊になってジャイアンの部屋へ忍び込むのび太だが、「のび太のユーレイはこわくない」と逆に凄まれてしまう。しかし、加勢したドラえもんとともに騒いだ結果、ジャイアンは母親からうるさいと叱られ、痛い目に遭うのだった。
この道具は幽霊になること自体は面白おかしく描かれていたが、それにより、人の家に勝手に侵入できてしまうことが恐ろしい。
実際ジャイアンをこらしめて味を占めたのび太は、勝手に人の家に入って宿題を写したり、入浴中のしずかのところで堂々と姿を現したりもしている。
「きらくだなあ。ずうっとこのままでいようかな」と、やりたい放題できることに魅了されたのび太。彼を見ても分かるとおり「うらめしドロップ」は、使用することで倫理観のタガが外れてしまう恐怖をはらんでいる道具なのだ。
■誰もいない異次元空間から永遠に帰れなくなる「地平線テープ」
コミックス第28巻に収録されている「地平線テープ」は、異次元空間に閉じ込められるという恐怖を描いたエピソードだ。
ある日、「地平線を見たい」というのび太の願いをかなえるため、ドラえもんが出したこのテープを壁に貼ると、その向こう側には見渡す限りの地平線が広がる空間が出現する。
のび太はこの広大な空間で昼寝を堪能し、仲間を誘って目いっぱい遊ぶ。しかし、ママに叱られそうになり空間の奥へと逃げ込んだ際に、事情を知らないママが誤って入り口のテープを剥がしてしまい、現実世界への出入り口が塞がれてしまうのだ。
広大な空間に取り残されたのび太とドラえもん。そこは太陽や星などの目印もなく、どこまで行っても何もない無限の空間だった。
最終的に、偶然にもテープを使って入浴していたしずかの浴室とつながり、九死に一生を得た2人。しかし、何もない異次元空間に取り残され、永遠に帰れなくなるという絶望感は、読んでいるこちらも背筋がゾクゾクしてしまった。この物語は、『ドラえもん』全編を通しても屈指のトラウマエピソードといえるかもしれない。
子どもの頃は、ただ笑って楽しんで読んでいた『ドラえもん』のエピソード。しかし、大人になってから読み返してみると、得体の知れない恐怖を感じてしまうことがある。
今回紹介した道具以外にも、使い方を誤ると世界を混乱させかねない危険な道具が数多く存在した。時には視点を変え、「これらのひみつ道具が現実世界にあったら?」と、想像しながら読み返してみるのも面白いだろう。
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