■愛する姉たちの復讐を果たす『鬼滅の刃』栗花落カナヲ

 次に取り上げるのは2016年から週刊少年ジャンプ(集英社)で連載されていた吾峠呼世晴氏による『鬼滅の刃』の栗花落カナヲだ。彼女は蟲柱である胡蝶しのぶの“継子”で、花の呼吸の使い手である。

 カナヲは幼少期に両親から虐待を受けて育ったトラウマから、感情を閉ざし、自らの意志で行動できない状態が続いていた。しかし、胡蝶しのぶやその姉である胡蝶カナエに引き取られて愛情を注がれたことで、少しずつ彼女の心にも変化が生まれ始める。

 時は流れ、鬼殺隊の最終選別合格の同期である竈門炭治郎との出会いを通し、自分の気持ちに従って行動するほど成長したが、そんなカナヲの怒りが露わになったシーンが、上弦の弐・童磨との戦いである。

 『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の終盤でも描かれたように、上弦の鬼・童磨と激闘を繰り広げた胡蝶しのぶは、童磨に吸収されてしまう。その姿を目の当たりにしたことで、カナヲの憤怒の念が頂点に達する。

 沸き立つ怒りを押し殺し、「私は…栗花落カナヲ、胡蝶カナエと胡蝶しのぶの妹だ」と声を絞り出す。その声色からは、愛する姉たちを奪った鬼への計り知れない恨みを感じさせる息遣いが明確に感じられた。

 映画の『無限城編 第一章』で描かれたのはここまでだが、原作ではその後、カナヲの怒りが単なる激情ではなく、彼女自身の意志で戦う覚悟を示した原動力として描かれている。自分の感情を閉ざしていた少女が、姉たちへの想いを胸に強敵に立ち向かう姿は、彼女の成長を強く感じさせた。

■一般人でも容赦なし!『SPY×FAMILY』ヨル・フォージャー

 最後のヒロインは『少年ジャンプ+』(集英社)で2019年から連載中の遠藤達哉氏の『SPY×FAMILY』に登場するヨル・フォージャーだ。「いばら姫」のコードネームで恐れられる凄腕の殺し屋だが、元の性格は非常に穏やかで、日常では仮の娘であるアーニャ、仮の夫であるロイドとともに慎ましい生活を送っている。

 彼女は世間離れした天然ボケも随所で炸裂させており、アーニャが入学を目指すイーデン校の面接練習では、「志望する理由」を「死亡理由」と勘違いし、心肺停止や出血多量と答えてしまうほどだ。

 誰にでも敬語で丁寧に接し、正義感が強いうえに嘘をつくのも苦手な彼女。そんな普段の姿と、殺し屋モード時のギャップも魅力であるヨルが、激しい怒りを見せたのがアニメ第6話「ナカヨシ作戦」だ。

 お金持ちの子どもが通うイーデン校への合格が決まり、制服を仕立ててもらって上機嫌で帰宅していたアーニャが、身代金目当てのチンピラたちに誘拐されそうになる。寸でのところで助けに入ったヨルは、スーパーで買った食材が詰まった紙袋で男の顔面を容赦なく殴りつけた。

 その誘拐犯を睨みつけるヨルの怒りの表情は、普段の姿とはまるで別人。さすがは殺し屋といった形相で寒気を覚えるほどだった。さらにチンピラが拾って投げつけようとしたカボチャを、ヨルは素手で貫いて破壊している。

 その人間離れした戦闘力と、「そのお野菜のようになりたくなかったら早々に立ち去りなさい!」という怒気のこもった言葉に気圧されてチンピラたちは退散。大切な人に手を出して、ヨルを怒らせたら命がいくつあっても足りないだろう。

 

 いつもは温厚で愛らしいヒロインたちが、さまざまな理由をきっかけに見たこともない怒りを見せるギャップには驚かされる。そんなシーンでは得てして、復讐・覚醒・使命といった大きなカタルシスを感じさせてくれるのも大きな魅力である。

 

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鬼滅の刃 1
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