■命を削る領域で絶対王者・ハヤトを撃破! 執念のマシン「凰呀」

 最後に紹介するのが、OVA最終章『新世紀GPXサイバーフォーミュラSIN』でブリード加賀が駆った「凰呀(オーガ) AN-21」である。

 本機は、かつて風見広之とともにアスラーダの開発へ携わりながらも、思想の違いによって袂を分かった名雲柾が独自に生み出したマシンだ。彼の死後、その遺志を継いだ弟・名雲京志郎は、“打倒アスラーダ”の切り札として凰呀を加賀に託したのだ。

 設計思想は、アスラーダとは対照的である。人とAIが共に学習し、成長しながら完成形を目指すアスラーダに対し、凰呀にはバイオコンピュータによる“完成された領域”が最初からインプットされている。人間側が、その限界値へ到達することを要求されるのだ。

 アプローチは異なれど、目指す先は同じ「人とマシンの融合」。その皮肉な帰結として、凰呀のシルエットは宿敵アスラーダに驚くほど酷似している。

 第17回大会、『SIN』で描かれたハヤトと「νアスラーダAKF-0/G」は、積み重ねてきた数え切れないレースの果てに、人とマシンが極限まで噛み合った、まさに完成形だった。もはや単に“速い”というだけでは表現しきれない、手のつけられない“強さ”を持つ絶対王者であった。加賀は、その牙城を崩すため、このピーキーなマシンとともに限界を超える走りへ身を投じるのである。

 そして迎えた最終戦・日本GPの最終コーナー。ハヤトと「νアスラーダ」が先を行き、誰もがそのまま決着すると思った次の瞬間だった。限界を迎えた凰呀のシステムは、まるで加賀の勝利への執念に応えるかのように一瞬だけ“意思”を見せる。

 そしてチェッカーフラッグの直前に、凰呀のブーストが作動。わずか数cmだけ先にコントロールラインを通過し、加賀に悲願のワールドチャンピオンをもたらしたのだった。

 マシンの示す限界領域へ、人間が命を削って到達する——。凰呀と加賀が体現したのは、アスラーダとは異なる、もう1つの「人とマシンの融合」のかたちだった。凰呀は間違いなくシリーズ最高峰の1台として語り継がれている。

 

 人間とAIの理想的な融合を求めた「スーパーアスラーダ01」、常識外れの機構で世界を制した「シュティール」、そして命を削る領域で絶対王者を打ち破った「凰呀」。速さも思想も異なる3台は、間違いなく『サイバーフォーミュラ』シリーズ史に名を刻んだ最強マシンたちである。

 サーキットに刻まれた勝利、クラッシュ、執念、そして人とマシンの絆。AI技術が現実のものとなった現代だからこそ、本作が描いた「人間とマシンの関係性」は、むしろ新鮮な輝きを放っている。35周年という節目を迎えたこの機会に、彼らの伝説的な走りをあらためて見返してみてはいかがだろうか。

 

■この機会に過去のシリーズをチェック

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