1991年の放送開始から35周年という節目を迎えたレースアニメ『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』。新作ショートアニメ制作の発表に加え、完全新作ゲーム『新世紀GPXサイバーフォーミュラSpiral』の始動も明らかとなり、再び大きな注目を集めている。
最先端AIを搭載したマシン、超高速域で展開されるレース、そして極限状態でぶつかり合うドライバーたち。本作を語るうえで欠かせない魅力のひとつが、シリーズを通じて生み出された驚異の「ドライビングテクニック」である。
今回は、『サイバーフォーミュラ』の歴史に刻まれた、伝説のスーパーテクニックの数々を振り返る。
※本記事には作品の内容を含みます。
■限界領域で完成した必殺技「ダブルのイナーシャルドリフト」
まず挙げたいのが、主人公・風見ハヤトの代名詞ともいえる「イナーシャルドリフト」だ。
OVA『新世紀GPXサイバーフォーミュラ11(ダブルワン)』で、ハヤトが駆る「スーパーアスラーダAKFー11」とともに完成したこの技は、マシンの慣性力を利用した超高速ドリフト走行である。
現実のラリー競技では珍しくない挙動だが、高度なコンピュータ制御による理想的なグリップ走行が絶対視され、第11回大会以降は完全なオンロード化されたサイバーフォーミュラの世界において、極めて異質な技術だった。
大胆な横滑りでコーナーを切り裂くその走りは、ハヤトというドライバーの個性そのもの。シリーズ屈指の“絵になる必殺技”であり、ハヤトはこれを武器に第11回大会を制し、ワールドグランプリ2連覇を達成するのである。
そして、この技をさらに極限まで発展させたのが、『サイバーフォーミュラZERO』で披露された「ダブルのイナーシャルドリフト」だ。
第13回WGP(ワールドグランプリ)最終戦。ハヤトは、チームメイトであるアンリ・クレイトーをワールドチャンピオンへ導くため、自ら前を走ってアンリを引っ張りながら、壮絶な走りを見せていた。
そこに立ちはだかるのが、自身もワールドチャンピオンを狙うブリード加賀であった。互いに知覚の限界領域「ZEROの領域」に到達した者同士が死闘を繰り広げる中、ハヤトは自身の代名詞であるイナーシャルドリフトさえも加賀に模倣され、追い詰められていく。
運命の最終ラップ。ハヤトは何を思ったのかアスラーダに「トラクション・アクティブ全回路オフ」を指示。それに対しアスラーダは「キミを信じる」と応え、電子制御をすべて解除する。
その状態で放たれたのが、ドリフトで滑っている状態から、さらにもう一段階マシンをイン側へ切り込ませる「ダブルのイナーシャルドリフト」だった。
常識外れのコーナリングで加賀の前へ出たハヤトは、ホームストレートでのブースト勝負も制してトップチェッカーを受ける。これにより、総合ポイントでアンリをワールドチャンピオンへと導いたのだった。
■偶然の失敗から誕生した空中技「リフティングターン」
『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』で登場した「リフティングターン」もまた、ファンの記憶に深く刻まれた驚異的な技のひとつだ。しかし、その誕生は意外にも偶然の産物だった。
第15回WGP中盤、新型マシン「νアスラーダAKFー0」を手にしたハヤトは、菅生修とのテスト走行中、ダブルのイナーシャルドリフトに失敗。縁石に乗り上げたマシンは宙を舞ってしまう。
だがその瞬間、アスラーダがエフェクトファンを起動。事故を回避しただけでなく、そのまま修のマシンを追い抜いてしまうのである。
アスラーダ自身が「手順ミスによる失敗」と語ったように、リフティングターンは偶発的な挙動から生まれた技だった。超高性能な学習型AIでありながら、フォローの手順を間違えてしまうという、実にアスラーダらしいエピソードである。
実戦で初めて投入されたのは、第6戦ドイツGPでのこと。爆発的な加速でフィル・フリッツのマシンに迫ったハヤトは、ここで初めてリフティングターンを発動する。
オーバースピードでコーナーへ進入し、あえて縁石に乗り上げてマシンをジャンプさせる。そして、空中でエフェクトファンを作動させ、車体姿勢を制御しながら向きを変え、着地と同時に相手を抜き去った。
この技でハヤトは、フィル、そして周回遅れのレオン・アンハートを一気にパス。レオンと接触してコーナーを曲がりきれなかったフィルとは対照的に、アスラーダだけが信じ難い軌道でコーナーを攻略していったのである。
この光景を目撃した加賀ですら「何だ今のは……!?」と驚きを隠せなかったように、その走りは誰もが度肝を抜かれるものだった。ハヤトの「ZEROの領域」がもたらす超人的な判断力と、アスラーダの精密なマシン制御があってはじめて成立する「リフティングターン」は、まさに人機一体を体現した離れ業だった。


