■冨岡義勇が纏う“半々羽織”に隠された意味

 第1話の終盤、鬼と化した禰󠄀豆子を討伐するために駆けつけたのが、鬼殺隊の水柱・冨岡義勇だ。彼は長い髪を1つに束ねた美青年で、左右で柄の異なる「半々羽織」を身にまとう姿が印象的な人物である。

 なぜ義勇は、このような風変わりな羽織を着ていたのか。

 実はこの羽織は、炭治郎が鱗滝のもとで出会う少年・錆兎の着物と、義勇の姉・蔦子の着物を半分ずつ合わせたものであった。

 物語が進んだ「柱稽古編」で明かされるように、錆兎は義勇にとって苦楽をともにした盟友であった。同い年で境遇も似ていた2人は、ともに鱗滝の元で修行を積み、鬼殺隊の最終選別に臨む。しかし、義勇は鬼に重傷を負わされ意識を失ってしまい、その間、錆兎は藤襲山に放たれた鬼をほとんど1人で討伐した末、強大な手鬼との戦いで命を落としてしまっていた。

 そして、羽織のもう半分の持ち主であった義勇の姉・蔦子は、祝言の前日に鬼に襲われ、義勇を庇って亡くなっている。つまり義勇は、大切な2人の想いを背負って、鬼たちと戦い続けていたのである。

 この羽織の謎は、『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録』にて、錆兎と姉・蔦子の形見であることが明かされている。作中の描写から「もしかして?」とファンが噂していた考察が、公式に裏付けられるかたちとなった。

 錆兎は物語の序盤に登場するが、その過去が義勇と深くつながっていることが判明するのは、物語が佳境に入ってからである。第1話の羽織の柄という小さなヒントからこの関係性を見抜いた読者の洞察力には、感服してしまう。

■炭治郎が大切にしている花札のような耳飾り

 炭治郎のトレードマークでもある花札のような耳飾りもまた、第1話から登場する重要なアイテムである。当初はただの装飾品に見えるが、物語が進むにつれて、その耳飾りが持つ重大な意味が明らかになっていく。

 浅草で炭治郎に見つかった無惨は、逃げた直後に配下の鬼を呼びつけ、「耳に花札のような飾りをつけた鬼狩りの頸を持って来い」と命じている。その際、無惨は過去に同じ耳飾りをつけた剣士に追い詰められた記憶を思い出し、身震いする様子があった。この時点で、耳飾りが無惨にとって何かしらの因縁めいたものであることが強く示唆されるのだ。

 この耳飾りは、竈門家に代々受け継がれてきたもので、亡き父・炭十郎から「神楽」とともに炭治郎に継承された。しかし、これが単なる形見ではないことが、物語の中で少しずつ明かされていく。

 後に、炎柱・煉獄杏寿郎の父である槇寿郎によって、その“耳飾りの剣士”こそがすべての呼吸の源流である「始まりの呼吸」——「日の呼吸」の使い手であったことが明かされる。

 炭治郎は「那田蜘蛛山編」で下弦の伍・累と戦った時、父の舞に着想を得て「ヒノカミ神楽」という独自の呼吸を生み出した。これこそが「日の呼吸」そのものであると炭治郎は推測し、使いこなすための鍛錬を積んでいくことになる。

 第1話から炭治郎が大切に身に着けていた耳飾りが、物語の核心を担う「日の呼吸」と、宿敵・無惨を最も苦しめた剣士につながっていくという壮大な展開は、ファンにとってはたまらない伏線回収だった。

 

 『鬼滅の刃』のアニメシリーズでは、「無限城編」の劇場版三部作で最終決戦が描かれる。この最終章では、これまで散りばめられてきた多くの伏線が回収されていくことだろう。

 劇場版の続編の公開を心待ちにしながら、それまで本編をじっくり読み返し、作者・吾峠氏が張り巡らせた緻密な伏線の数々を再確認してみてはいかがだろうか。

 

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鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録 (ジャンプコミックス)
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