どうして『プラグマタ』はこんなに面白いのか…これまでのTPSにない「不思議な高揚感」と「感情移入」【宇内梨沙「ひねもすぬまりぬまりかな」】の画像
宇内梨沙

 TPS(サードパーソンシューティング)の金字塔と称される『バイオハザード4』(カプコン)が発売されてから21年。以降、さまざまなTPSの基礎となり、『The Last of Us』シリーズ(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)をはじめ、数々の名作が誕生しました。

 しかし同時に、長年TPSを遊び続けてきたゲーマーにとっては、「TPSとしての面白さ」そのものに、ある種の到達点が見えていたようにも感じます。

 だから、私にとっては「戦闘が面白いか」以上に、シナリオや世界観、キャラクター性といった、戦闘以外の部分が作品評価の中心になっていました。

 そんな中で、「TPS2.0時代」の幕開けを感じさせたのが、2026年4月にカプコンから発売された完全新作『プラグマタ』でした。

 本作は、主人公・ヒューと少女型アンドロイドのディアナが、月面研究基地で出会い、そこから脱出を目指す物語です。ヒューは武器を使って敵ロボットを攻撃し、ディアナはハッキング能力によって敵の装甲を崩し、弱点を露出させます。

 敵は強固な装甲に守られているため、ヒューの攻撃だけではほとんどダメージが通りません。ディアナによるハッキングがあって初めて、敵を撃破することができるのです。

 この「二人を同時に操作する」という点こそが、本作最大の魅力です。

 ヒューは従来のTPSのように、照準を合わせて敵を攻撃し、ディアナは迷路のようなパズルを、ボタンを用いてリアルタイムで解いていきます。

 このパズルは、いわば「一筆書き」でゴールを目指すというものなのですが、ただ最短ルートでゴールを目指せばいいわけではありません。パズル内には、防御力低下、敵の停止、同士討ち誘発など、さまざまな効果を持つハッキング用アイテムが配置されており、どのルートを通るかで戦況が大きく変わります。

 つまり、ヒュー側ではTPSとしてのエイム力や立ち回りが求められ、ディアナ側では瞬時の判断力と戦略性が試される。この二層構造によって、これまでのTPSにはなかった感覚が生まれているのです。

 ヒューで敵を撃ちながら、わずかに残った意識でディアナのパズルを解いていると、「自分はいま何を見ているんだ……?」という不思議な高揚感に襲われます。脳が強制的に拡張されていくような“覚醒感”すらあるんです。

 特に本作の戦闘が真価を発揮するのは、複数タイプの敵を同時に相手取る場面です。

 空からミサイルを撃ち込んでくる敵、近接武器で襲いかかる敵、大型で突進攻撃してくる敵が、狭い空間で一斉に迫ってくる。そんな状況下で、ヒューの武器とディアナの能力を瞬時に使い分けながら戦う必要があります。

 私は難易度「スタンダード」でプレイしましたが、TPS経験者であるにもかかわらず、何度もゲームオーバーになりました。戦闘エリア内の武器やアイテムにも限りがあり、「どの順番で敵を処理するか」「どのハッキング効果を使うか」を、何度もリトライしながら学んでいくことになります。

 正直、従来のTPSであれば、ただショットガンを撃っていれば突破できる場面も少なくありません。

 しかし『プラグマタ』では、まず敵の装甲を剥がさなければ話にならない。しかも、適当にハッキングを済ませると、わずか数秒で装甲が再生する敵すら存在します。難易度スタンダードでも、ゴリ押しはほとんど通用しません。常に効率的で、最善の判断を求められるのです。

 その緊張感こそが、本作の戦闘を唯一無二のものにしています。

 また、単体戦となるボス戦では、TPS本来の面白さを味わうことができます。高威力で戦術も多彩な大型ボスを相手にするには、攻撃を見切り、最適なタイミングで回避することが重要になります。ジャスト回避からの反撃など、アクションゲーム的な快感もしっかり用意されているんです。

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