昨今、数多くの漫画やアニメが実写映画化されている。原作ファンにとって、三次元で表現されるキャラクターの再現度が気になるのは当然のことだろう。
観客に違和感を与えずに物語の世界観に引き込むため、俳優たちはときに過酷なトレーニングで体形を変化させるなど、徹底した役作りを行う。特に、大幅な増量や減量といった肉体改造は、単に外見を似せるだけではなく、キャラクターの内面や生き様までをも体現する重要な手段となるのだ。
俳優たちの凄まじい努力によって作り上げられた肉体は、キャラクター造形に圧倒的な説得力をもたらし、作品全体のクオリティをより高みへと押し上げる。
今回は、実写化作品において驚異的な肉体改造を成し遂げた俳優たちを、5回にわたってピックアップし、そのプロフェッショナルな姿勢に迫っていきたい。
(第3回/全5回)
※本記事には作品の内容を含みます
■妖艶なホムンクルスの紅一点を体現…『鋼の錬金術師』松雪泰子
2017年に公開された『鋼の錬金術師』は、錬金術が存在する世界を舞台に「賢者の石」を求めて旅をする兄弟の物語を描いたダークファンタジー作品だ。荒川弘さんの大人気漫画を原作とした実写映画で、多数の有名俳優たちが原作に登場する人気キャラクターを演じている。
中でも、役作りのために過酷な肉体改造に取り組んだのが、数々のドラマや映画で活躍してきた実力派俳優の松雪泰子さんだ。
本作で松雪さんは、敵組織である人造人間「ホムンクルス」の紅一点・ラストを演じた。艶やかな黒髪と抜群のプロポーションが特徴のラストは、主人公であるエルリック兄弟の前に立ちはだかる存在だ。
松雪さんはもともとスレンダーな体形だったが、ラストの持つ力強く肉感的な体つきをよりリアルに再現すべく、独自にトレーニングを敢行。上半身を中心に5kgもの増量を行い、グラマラスなラストの肉体を見事に作り上げた。その結果、単なる美しさだけではなく、圧倒的な戦闘能力と残忍さを内に秘めたホムンクルスという設定に、高い説得力を持たせることに成功したのである。
作中では数々のアクションにも挑戦している松雪さんだが、ヒールを履いた不安定な状態でも、力強くしなやかな動作を見事に演じきっている。彼女自身、“トレーニングを積んでおいてよかった”と当時のインタビューで明かしているが、この抜群のアクションも役作りで培った肉体があってこそ実現できたのだろう。
ウェーブのかかった黒髪と大胆な黒いドレスを身にまとった姿は、まさに妖艶な悪女・ラストそのもの。ビジュアルの再現だけでなく、松雪さんは彼女の性格や立ち居振る舞いを完璧にインプットすべく、原作漫画を読破し、アニメシリーズも全て視聴したという。
本作を手がけた曽利文彦監督が「普段の松雪さんは本当に温和で、優しい方なのですが、あのコスチュームになった瞬間、近寄りがたいものがありました」と語るほどに、松雪さんは徹底的にラストを完全再現してみせた。キャラクターを深く解析し、自身に憑依させるかのような役作りの徹底ぶりには、彼女が大女優である所以がうかがえる。
ファンタジー作品の実写化という難易度の高い挑戦ではあったが、彼女の演じるラストは原作ファンからも高い評価を受け、実写版映画における印象的なキャラクターとして記憶されている。
■松雪泰子さんが演じた妖艶なホムンクルスをPrime Videoでチェック



