■仲間救出でも生かされた脱獄スキル…旭川兵舎、網走監獄etc…
この軟体動物のような特異体質は、自身の脱獄だけでなく、味方の救出劇でも大きな武器となる。その一例が、コミックス第3巻、第七師団の本拠地・旭川兵舎に囚われた主人公・杉元佐一を救出する場面だ。
窓の細い鉄格子の1本を無理やり曲げ、わずかな隙間をこじ開ける。さらに、ひぐまの油を全身に塗って滑りを良くし、関節を外しながら暗闇から“ヌッタァ”という効果音とともに侵入。その光景は、助けられる側の杉元ですら思わず「妖怪?」と戦慄したほどであった。
さらに、物語中盤のクライマックス、アシㇼパの父「のっぺら坊」が収監される網走監獄への潜入においても、彼の能力は不可欠であった。特異な身体能力だけでなく、監獄の構造や警備の癖を熟知した総合的な脱獄スキルによって、白石は文字通り“鍵を握る”役割を果たしたのである。
そして、この特異体質がさらに印象的なかたちで活かされた場面として、個人的に好きなのが、コミックス第25巻で描かれた救出劇だ。
広大な北海道の森林で行われる伐採は、複数の木にあらかじめ切れ込みを入れ、将棋倒しのように一斉に倒すという豪快な方法がとられる。その連鎖に巻き込まれ、杉元とアシㇼパは折り重なった倒木の隙間に閉じ込められてしまう。
そんな絶体絶命の2人を救うために駆けつけたのが、ほかでもない白石だった。
普通の人間なら到底入り込めない、複雑に絡み合った倒木が生み出すわずかな隙間。白石は関節を外し、体をねじ込みながら2人の居場所を探し続ける。そしてついに見つけ出した瞬間、その目には安堵の涙がにじんでいた。
この救出劇は、彼の特異な能力と仲間を想う義理人情の両方がはっきりと表れた場面であり、白石というキャラクターの魅力が際立つ、作中屈指の名シーンといっていいだろう。
どれほど堅牢な壁に阻まれても、どれほど過酷な状況に追い込まれても、最後には笑いながらすり抜けていく……。白石の脱獄は、単なる思いつきや偶然ではない。緻密な計算と常人離れした身体能力、そして何より執念に裏打ちされた離れ業である。
一見すると情けなく、どこか頼りない。しかしその実、誰よりもしぶとく、誰よりも自由に生き抜く男。それこそが「脱獄王」白石由竹の魅力なのだ。
今冬には、アニメ版『ゴールデンカムイ』最終章完結編「暴走列車編」の放送が控えている本作。彼の活躍を再び映像で見られる日も近い。最後の最後まで、この脱獄王がどのような離れ業を見せてくれるのか、大いに注目したい。
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