バトル漫画の醍醐味として、個性豊かなキャラクターたちがここぞという場面で放つ「必殺技」は、欠かすことのできない要素の1つだ。
特に、彼らが切り札として温めている大技は、繰り出したときの迫力あふれる描写も、他の技とは一線を画す。ド派手な演出と強烈な威力に読者がいろめき立つ大技だが、中にはこの大技がまさかの不発のまま終わってしまった意外なパターンも存在する。
ここでは、「もし発動していたらどうなっていたのか」とその効果を想像してしまう、謎に包まれたまま不発に終わった「最強の切り札」について見ていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■長い技名とポージングが仇に…『ドラゴンボール』リクームの奥の手
『週刊少年ジャンプ』(集英社)で1984年から連載が開始された鳥山明さんの『ドラゴンボール』は、今もなお世界中で絶大な人気を誇る伝説的なバトル作品だ。2026年秋には新作アニメ『ドラゴンボール超 ビルス』の展開も予定されており、その人気はとどまるところを知らない。
主人公・孫悟空が数々の強敵と激闘を繰り広げていく本作において、切り札の大技が思わぬかたちで不発で終わってしまったのが、フリーザ軍のギニュー特戦隊の1人・リクームだ。
「フリーザ編」で登場したリクームは、その圧倒的な実力でベジータ、クリリン、孫悟飯を立て続けに撃破。しかし、遅れて駆けつけた悟空とは実力差が歴然であり、リクームの攻撃はまるで歯が立たなかった。
追い詰められたリクームは悟空らをまとめて葬るため、広範囲を吹き飛ばす奥の手の発動を宣言。そして彼は大袈裟なポージングを決めながら「リクーム… ウルトラ… ファイティング……」と、長い技名を叫び始める。とてつもない必殺技が発動するかに思われたが、悟空にその隙を突かれ、ボディに強烈な肘鉄を叩きこまれて敗北してしまった。
漫画では、結局どんな技だったのかは謎のままとなっていたが、後に登場したゲーム作品では、その全貌が明らかになっている。
2018年に発売されたゲーム『ドラゴンボール ファイターズ』において、技名が「リクームウルトラファイティングミラクルボンバー」であることが判明。また、別のゲーム作品では「ウルトラファイティング・アタック」という名称になっていた。その多くが大爆発を起こして、周囲の敵に大ダメージを与える技として描かれている。
もしリクームがポージングにこだわらずに即座に技を放っていたら、さすがの悟空も無事では済まなかったかもしれない。
■美しさに心奪われ不発に…『北斗の拳』血粧嘴
1980年代の『週刊少年ジャンプ』黄金期を代表する作品の1つが、1983年から連載された『北斗の拳』だ。原作:武論尊さん、作画:原哲夫さんのタッグが贈る本作は、2023年に40周年を迎え、今年新作アニメの『北斗の拳 -FIST OF THE NORTH STAR-』が放送されており、大きな話題となっている。
本作には多種多様な拳法の使い手が登場するが、そのなかで奥義を放つことなく散っていったのが、南斗紅鶴拳の伝承者・ユダである。
彼は「美」に対して強烈な執着を持つ男で、同じ南斗六聖拳のレイの華麗な拳法に、修業時代から激しい嫉妬心を抱いていた。
作中、ユダは因縁の相手であるレイと激突。ダムを決壊させて足場を奪うという卑劣な方法でレイを追い詰めた。
一方的にレイをいたぶっていたユダだが、とどめを刺すべく南斗紅鶴拳の奥義「血粧嘴(けっしょうし)」を繰り出そうとする。だがその瞬間、レイも奥義「飛翔白麗」を放った。その技のあまりの美しさに魅了されたユダは思わず動きを止めてしまい、そのままレイの奥義を食らって致命傷を負い、命を落とした。
そのためユダの奥義「血粧嘴」は名前が明かされただけで不発に終わり、どのような技なのか謎に包まれていた。だが後に登場したゲーム作品で、その実態が描かれている。
その内容はゲームごとに効果が異なっており、相手を目掛けてドリルのように突進したり、遠方から「鶴」を形どった波動を叩き込んだりと、さまざまなかたちで表現されている。
作品ごとにバリエーション豊かだが、いずれも南斗紅鶴拳の名にふさわしく、動作やエフェクトから鳥が連想されるのは面白い点だ。まさに、妖しくも美しいユダの魅力を存分に表現した奥義といえるだろう。


