『HUNTER×HUNTER』ゲンスルー戦に『進撃の巨人』シガンシナ区決戦も…バトル漫画に登場する“時をかけて練り上げた”「大がかりな戦術」の画像
TVアニメ『進撃の巨人』Season 2 Vol.1 [Blu-ray](ポニーキャニオン)(C)諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

 鮮やかな逆転劇は、漫画の醍醐味である。なかでも単なる力と力のぶつかり合いではなく、緻密に練られた「大がかりな戦術」によって盤面が一変する瞬間は格別だ。

 それらの勝利は決して偶然ではない。そこには、常識を覆す大胆な発想と周到な下準備、さらには常軌を逸した覚悟が存在した。すべては、勝利をたぐり寄せるための必然であったのである。

 今回は、そんな読者の度肝を抜いた3つの戦術を厳選して振り返る。

 

※本記事には各作品の内容を含みます。

 

■執念の“落とし穴戦術”『HUNTER×HUNTER』対ゲンスルー戦

 冨樫義博氏による漫画『HUNTER×HUNTER』の「グリードアイランド編」におけるクライマックス、主人公のゴン=フリークスとゲンスルーの一戦は、戦術が実力差をくつがえした象徴的なバトルである。

 ゲーム内で50人以上を殺害している危険な3人組「ボマー(爆弾魔)」。とりわけリーダー格のゲンスルーは、戦闘経験、念能力の練度ともに、このときのゴンを大きく上回っていた。正面から挑めば敗北は必至。その状況下で、ゴン、キルア=ゾルディック、ビスケット=クルーガーの3人は、実力差から生じる相手の油断すらも計算に織り込んだ、周到な作戦を組み立てるのである。

 作戦の肝は、事前に仕込んでおいた巨大な落とし穴だった。ゴンはあえて重傷を負いながらゲンスルーの油断を誘って指定のポイントへと導く。「やられっ放しはやっぱりムカツく!!」と意地を優先させる危うさを見せつつも、最終的にはガソリンと大岩を呼び出すカード能力を正確なタイミングで使用。落とし穴の底で、渾身の一撃を叩き込んで勝利した。

 自身の肉体すら“餌”として差し出し、相手が勝利を確信したまさにその瞬間、地の底へと叩き落とす。ゴンの勝利への執念とキルアとビスケの緻密なサポート、さらにはツェズゲラ組やゴレイヌといった協力者との連携が見事に噛み合った、まさに「チームでつかんだ」戦術的勝利であった。

■命を燃やす“時間稼ぎ”『進撃の巨人』シガンシナ区決戦

 諫山創氏による『進撃の巨人』の「シガンシナ区決戦」は、物語全体の大きな転換点となった。この戦いにおいて、アルミン・アルレルトが超大型巨人(ベルトルト・フーバー)を討ち取るために立てた作戦は、自身の命を“捨て石”にすることを前提とした、あまりにも壮絶なものだった。

 超大型巨人が全身から放つ高熱の蒸気は、接近するものを焼き尽くす絶対的な防御壁だ。だがアルミンは、蒸気を出し続けることで巨人の肉体が徐々に消耗し、骨格が細っていくという弱点を見抜いていた。

 アルミンは、エレン・イェーガーが巨人の硬質化能力で作った“硬化体の抜け殻”を囮に使い、自身は超大型巨人の体にアンカーを突き立てた。そして、至近距離で全身を焦がす熱風に耐え続け、相手が消耗するまでの時間を稼いだのである。

 皮膚が焼け、意識が遠のくなかでも、彼は決して手を離さなかった。その姿は、作戦の成功を信じていても、目を背けたくなるほど痛ましいものだった。

 やがてベルトルトが勝利を確信し、蒸気の放出を止めたその一瞬の隙を突き、背後から巨人化を解いた人間の姿のエレンが本体のうなじを斬り裂いた。すべては、この一撃を通すための壮絶な時間稼ぎだったのである。

 「何かを変えることのできる人間がいるとすれば その人は きっと… 大事なものを捨てることができる人だ」。かつて自身が語った言葉を、文字通り命を賭して証明したこの戦術。それは、単なる戦術家としての才覚以上に、アルミンの「人類の勝利」に対する凄まじい執念がもたらした奇跡であった。

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