吾峠呼世晴氏の大ヒット漫画『鬼滅の刃』は、鬼にされた妹・竈門禰󠄀豆子を人間に戻すため、主人公・竈門炭治郎が鬼狩りの道へと進む物語だ。
壮絶な過去を持つキャラクターたちが命をかけて鬼と戦う姿は多くの読者の胸を打ち、作画や演出にこだわったアニメ版も絶大な人気を博している。
本作において、強靭な肉体と異能の血鬼術を扱う鬼は人間にとって圧倒的な脅威として描かれる。しかし、その強さゆえの油断が、鬼たちを思わぬ敗北に導いた皮肉な展開も少なくない。
そこで今回は『鬼滅の刃』に登場する上弦の鬼が見せた、勝敗を分けることになった「油断」をエピソードとともに紹介しよう。
※本記事には作品の内容を含みます。
■登場が遅すぎた…!?「遊郭編」妓夫太郎
「遊郭編」のラスボスとして登場した妓夫太郎と堕姫の兄妹は、花魁として遊郭に潜んでいた堕姫と、彼女の体内に潜む兄・妓夫太郎という2体で1体の鬼だった。
当初、堕姫と交戦したのは炭治郎だったが、刃物のように鋭い帯を自在に操る血鬼術に苦戦を強いられる。そこへ音柱・宇髄天元が駆けつけ、一度は堕姫の頸を斬ることに成功。戦いは終わったかに思えた。だがその直後、彼女の体内から兄・妓夫太郎が姿を現し、そこから戦いは絶望的な展開に突入する。
妓夫太郎は猛毒を持つ血の鎌を操る血鬼術の使い手であり、その戦闘能力は堕姫よりも遥かに高い。上弦の「陸」の階級にいるのも、妓夫太郎の強さがあってのものだ。実際に鬼の始祖・鬼舞辻無惨も堕姫を「足手纏い」と表現していたほどである。
その後、妓夫太郎の猛毒と血の鎌の攻撃により、炭治郎と宇髄は極限まで追い詰められていった。この戦況を見ると、もし妓夫太郎が最初から戦っていたら、あっという間に勝負はついていたかもしれない。宇髄が現場に到着するまで少々時間があり、炭治郎1人で妓夫太郎のような上弦の鬼を相手にするにはまだ実力不足だったはずだ。
覚醒した禰󠄀豆子に堕姫が一方的に袋叩きにされている時にも、妓夫太郎は沈黙を貫いていた。妹の危機にもかかわらず、なぜもう少し早く出てこなかったのだろうか。その判断の遅れこそが彼の油断であり、敗北を招いた一因だったのかもしれない。
■芸術家のプライドが邪魔をした?「刀鍛冶の里編」玉壺
霞柱・時透無一郎と恋柱・甘露寺蜜璃が活躍する「刀鍛冶の里編」では、上弦の肆・半天狗と、上弦の伍・玉壺という2体の上弦の鬼が登場する。
このうち、異形の鬼・玉壺と戦ったのが時透だ。時透は冷静に戦いを進めるが、玉壺の血鬼術「水獄鉢」に囚われ、絶体絶命の危機に陥ってしまう。水球の檻の中では呼吸ができず、内側から壊すこともできなくて時透は死を覚悟した。
このピンチを救ったのが、刀鍛冶の里の少年・小鉄だ。彼の機転によって「水獄鉢」から脱出した時透は、刀鍛冶の鉄穴森鋼蔵から新しい日輪刀を受け取り、痣を発現させて覚醒する。
そんな時透を見て驚く玉壺。それもそのはず、彼は時透を「水獄鉢」に閉じ込めてしとめたと完全に油断しており、その場を離れて刀を研ぎ続ける鋼鐵塚蛍に干渉していたのである。自称芸術家の玉壺にとって、驚異的な集中力で刀を研ぎ続ける鋼鐵塚の姿は、嫉妬と羨望の対象だったのだ。
それほど玉壺の血鬼術「水獄鉢」は一撃必殺の技だったのだろう。しかし、彼が時透から注意を逸らしたことで反撃の隙を与えてしまい、最終的に時透が放った「霞の呼吸 漆ノ型 朧」により、玉壺は頸を斬られることになる。
真の姿を現しながらも、時透に圧倒された玉壺。そもそも彼は時透のことを“子ども”だと甘く見ており、鋼鐵塚への嫉妬心から冷静さも欠いていた。その油断とプライドの高さが、彼を破滅の道へと導いたのだろう。


