漫画やアニメ、小説の世界には、薄気味悪い空気をまとったキャラクターがたびたび登場する。見た目はごく普通でありながら異常性を秘めていたり、感情の一部が欠落していたりと、その内面には背筋が凍るような危うさが潜んでいる。だが同時に、その底知れなさやミステリアスな魅力こそが、読者の目を強く引きつけてやまない。
実写化作品においては、俳優たちがそうした見えない恐ろしさをいかに体現できるかが重要になる。原作の不気味さや違和感にリアリティを与えられるか否かは、作品の完成度を大きく左右する要素だ。
今回は、そんな難役に挑み、普段のイメージを覆す異様な演技で強烈な印象を残した俳優たちを、5回にわたって振り返っていく。
(第2回/全5回)
※本記事には作品の内容を含みます
■ホラーとボーイズラブの融合!?『さんかく窓の外側は夜』岡田将生さん
ボーイズラブ漫画を専門的に扱う『MAGAZINE BE×BOY』にて、2013年から2020年にかけて連載されていたヤマシタトモコさんの『さんかく窓の外側は夜』。
霊が見えてしまう書店員・三角康介と、ミステリアスな除霊師・冷川理人の出会いから始まる本作は、人ならざるものとの対峙を軸にしながらも、人の内面に潜む恐怖や執着を描き出した作品だ。
三角の力を見込んだ冷川は彼を自身の仕事に誘い、2人は次第に不可解な事件の渦中へと巻き込まれていく。そして、呪いを操る謎の女子高生・非浦英莉可の存在にたどり着き、複雑に絡み合った人間関係と過去に迫っていくことになる。
そんな本作は2021年に実写映画化された。ボーイズラブ雑誌発の作品である原作は、直接的な描写こそないものの、どこかグレーなニュアンスを含んだ、いわゆるブロマンス的な作風が特徴だ。一方、実写版ではそうした要素が抑えられ、ホラーミステリー色を前面に押し出した仕上がりとなっている。
キャストも華やかで、三角を志尊淳さん、非浦を平手友梨奈さんという魅力的な俳優が演じた。そのなかでも注目を集めたのが、除霊師・冷川を演じた岡田将生さんだ。
冷川という人物は壮絶な生い立ちを抱えており、その影響もあって実に個性的な性格の持ち主である。霊を祓うことに倫理的なためらいをほとんど見せず、人の感情にも無頓着。言動は常に淡々としており、どこか底知れない危うさをまとっている。
岡田さんは、冷川のそうした雰囲気を見事に実写の世界へと落とし込んだ。感情の起伏が見えにくいにもかかわらず不思議な圧を放ち、いつも通りの爽やかな表情のままでありながら、独特の空気感を漂わせているのである。持ち前の端正なルックスもその要因の1つであろう。
三角に触れながら行う除霊シーンでは、張り詰めた緊張感と同時に距離の近さも相まって、どこか艶めいた空気すらも生まれていたほどだ。岡田さんと志尊さんという美しい2人の組み合わせに、思わずドキッとした視聴者も多いのではないだろうか。
さらに、普段であれば明るく見える岡田さんの微笑みも、本作ではどこか影を帯びて見える。かと思えば、三角との関係性が深まるにつれて独占欲のような感情を覗かせ、時折彼に対して繊細な表情を見せる場面も。
そうした不気味さと人間らしさのバランスが実に絶妙なのだが、岡田さんは冷川の“独占欲”に人間らしさを見出しつつ、過剰にならないようさじ加減を探りながら演じていたという。また、“心地の良い気持ち悪さ”をどれだけ出すか意識していたとも語っている。こうした意識の上に成り立つ細やかな演技こそが、感情の波を失った冷川に宿る静かな異常性を際立たせているのだ。
除霊というホラーな行為を通して、人の内面に潜む闇に迫っていく『さんかく窓の外側は夜』。その中心にいる冷川を、岡田さんは原作の持つニュアンスを踏まえつつ、リアリティある人間として体現してみせた。コミカルな役からこういったシリアスな役まで幅広く演じられるのは、抑えた芝居の中で感情をにじませる確かな表現力があるからだろう。
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