【実写化作品「人気俳優の不気味キャラ」3】森田剛が実写化作品で魅せた「戦慄のサイコキラー」、観る者の脳裏に焼き付く「常軌を逸した姿」のリアルの画像
映画『ヒメアノ~ル』DVD (C) 2016「ヒメアノ〜ル」製作委員会

 漫画やアニメ、小説の世界には、薄気味悪い空気をまとったキャラクターがたびたび登場する。見た目はごく普通でありながら異常性を秘めていたり、感情の一部が欠落していたりと、その内面には背筋が凍るような危うさが潜んでいる。だが同時に、その底知れなさやミステリアスな魅力こそが、読者の目を強く引きつけてやまない。

 実写化作品においては、俳優たちがそうした見えない恐ろしさをいかに体現できるかが重要になる。原作の不気味さや違和感にリアリティを与えられるか否かは、作品の完成度を大きく左右する要素だ。

 今回は、そんな難役に挑み、普段のイメージを覆す異様な演技で強烈な印象を残した俳優たちを、5回にわたって振り返っていく。

(第3回/全5回)

※本記事には作品の内容を含みます

■怪演に背筋がゾクゾク『ヒメアノ~ル』森田剛さん

 2008年から2010年まで『週刊ヤングマガジン』にて連載されていた『ヒメアノ~ル』は、ギャグと不条理の鬼才・古谷実さんの作品である。

 古谷さんは、2001年に発表された『ヒミズ』以来、何気ない日常と、その中に潜む人間の闇に深く斬り込むダークな作風へシフトしたが、殺人鬼をテーマにした『ヒメアノ~ル』もその1つだ。

 本作の特徴は、人を殺めることで性的興奮を覚える歪んだ性質を持って生まれた、森田正一という人間の苦しみを掘り下げている点にある。作中では、自分の異質さに気づいてしまった森田の絶望や孤独が丁寧に描かれ、読み手の心を揺さぶっていく。

 そんな『ヒメアノ~ル』は、2016年に実写映画化された。実写版では、学生時代の凄惨ないじめによって森田の心が壊れた設定になっていたり、内面の深掘りが原作ほど詳細に描写されていなかったりする。しかし、それが逆に森田の異常性を際立たせ、彼の心の痛みを想像する余地を残す仕上がりになっている。

 幸せな生活に迫りくる脅威に翻弄される主人公・岡田進を演じたのは濱田岳さん。そして、彼の日常を脅かすサイコキラー・森田正一を演じたのが森田剛さんだ。

 もともと森田さんは、V6のメンバーとして90年代から第一線で活躍し続けた人気アイドル。だが、演技の世界に足を踏み入れて以来、その表現力が高く評価され、荒戸源次郎さんや蜷川幸雄さんといった名監督、名演出家をも唸らせてきた。とりわけ、危険な香りをまとう役柄においては群を抜く存在感を放ち、唯一無二の俳優としての地位を確立している。

 本作のようにサイコキラーを描く作品では、その異常性を表現するためにあえて過剰な演出がされることも少なくない。しかし、森田さんの演技は恐ろしいほど自然で、だからこそ“現実にいそう”な怖さがある。

 無表情から滲む不穏な気配、殺人への躊躇のなさと残忍性、感情の欠落。作中で森田正一が自ら語った“普通ではない人間”の壊れた精神面の再現性の高さは、鳥肌が立つほど素晴らしい。

 感情の読めない目つきや、そこから生まれる緊張感、どこか漂う物悲しさは、森田さんにしか出せない独特なものといえるだろう。それが「怖いけれど、可哀想にも見えてしまう」という複雑な感情に繋がり、観る者の心をぐちゃぐちゃにかき乱すのである。

 とりわけ印象的なのは、彼の精神の崩壊が極限に達するラストシーン。岡田を乗せた車で暴走した森田は、事故で頭を打ち、岡田と友達だった頃の穏やかな一瞬を思い出す。血まみれのまま「借りてたゲーム返さなきゃ」「おかあさーん! 麦茶2つ持ってきてー」と明るい声で言い、そして最後には「またいつでも遊びに来てよ」と子どものような顔を見せる。

 この常軌を逸した姿はあまりにも悲しく、胸を締め付けられた。それまでの残忍さと、ここで見せた無邪気さの恐ろしいまでのギャップは、間違いなく森田さんの表現力の高さを証明している。 

 

 「怖すぎるけどまた見たくなる」という不思議な感覚に陥る映画『ヒメアノ~ル』。その根幹を支えているのは、森田正一という人物の残虐性と悲しみを見事に体現した、森田さんの演技力の高さに他ならない。彼はこれからも個性的な役柄を通して、その唯一無二の存在感を示し続けてくれることだろう。

 

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