4月から続々放送開始された今期の春アニメ。人気タイトルの続編やオリジナルアニメ、完全新作など幅広い作品がそろっているが、中でもひときわ強烈な存在感を放っているのが、松木いっかさんの漫画が原作の『日本三國』だ。
世界で核戦争が発生して以降、大震災や災害、悪政などが重なって革命が起こり、人口は激減。文明が崩壊して、三つの国に分裂した近未来の日本を舞台に、日本再統一を目指す青年・三角青輝(みすみ・あおてる)の活躍を描いた戦記ものである。
アニメ放送後、SNSには連日多くのファンから反響が寄せられ、ゲームデザイナーの小島秀夫さんも「凄いアニメだった。びっくり。」とXにて言及。お笑いタレントの有吉弘行さんも原作漫画に対し「面白すぎて新刊が出るたびに一巻から読んでる」と、本作を大絶賛している。
放送のたびにXでは「日本三國」がトレンド入りしており、すでにアニメファンからは「今期覇権アニメ」との声が日に日に増している状態だ。なぜ同作がここまで注目を集めているのか。SNSでの反応や、物語の展開をもとに、その魅力を紐解いていこう。
※本記事はアニメ『日本三國』1話・2話の内容を含みます。未視聴の方はご注意ください。
■初回の衝撃展開を支えた、独創的な映像表現
まずは第1話の大まかなあらすじから。
主人公は、大和国(やまとこく)の田舎で暮らす青年・三角青輝。アニメ序盤では、妻の小紀(さき)や村の人々との、慎ましくも温かい生活の様子が描かれていたが、国の実質的な支配者である平殿器(たいら・でんき)らの登場で雰囲気は一変する。
平は自身の気分を害した人を「車裂きの刑」に処し、さらにその後、正義感の強い青輝の妻・小紀を、政府への反発を理由に無惨にも斬首してしまう。怒りに身を任せて暴発しそうになる青輝だったが、生前の妻の言葉を思い出してこらえ、自身の弁舌をもって平殿器を感心させることとなる。
その後青輝は、小紀に誓った「泰平の世を築く」という約束を果たすべく、辺境将軍・龍門光英(りゅうもんみつひで)の行う仕官試験を受けるために大阪へ向かうのであった。
初回から妻の死、巨悪の登場、類まれなる弁舌と国家統一への決意などが描かれ、目まぐるしく状況が変わる展開となった。SNSでは「とんでもないアニメが始まったな」「今まで見たアニメでトップレベル」という声が多くあがっていた。
さて、そんな没入感の高い展開で多くの視聴者の注目を集めた本作だが、その要因はストーリーの密度だけでなく、原作が持つ圧倒的な絵力を、独創的な演出と表現手法で再構築した「アニメーションの質」そのものにもあったといえるだろう。
第1話の冒頭、スマホ画面に映し出されるSNSやニュースサイトのような構図で、日本がどのように衰退していったのかが淡々と語られた。我々の日常で最も身近なデバイスを、滅びゆく文明の記録媒体として提示するという独創的な演出は強烈なインパクトがあり、「昔話だと思ったらガッツリ未来だった」「ディストピアすぎる」と、本作独特の世界観に驚く声が相次いだ。
また、青輝が雪の中で小紀の死を認識する前後では、ほぼモノクロに近い冷えた色合いを維持しつつ、白い雪と赤い血だけが際立つ鮮烈な描写がなされており、原作漫画の持つ緻密で熱量の高い画力が見事に映像表現されていた。
ほかにも、実写映像をもとにしたロトスコープを思わせる手法や、筆文字を画面全体に映すことで青輝の心理描写を表現するなどの試みも用いられており、こうした多角的な演出が凄惨なシーンをより一層強烈に印象づけた要因だったのかもしれない。


