■砂に潜ってケンシロウを待ち伏せ…「カニ料理はいらん」と一蹴されたシエ

 最後は「修羅の国編」に登場した、ツッコミが追いつかないほど残念なザコ・シエの策である。男子の生存率がわずか1%という過酷な修羅の国を生き抜いてきたシエだが、その容貌は完全に「カニ」そのものであった。

 両手には巨大な刃のついたグローブを装着し、語尾に「ガニィ」とつけるなど、自らカニであることを過剰にアピールしている。彼は「不帰の谷」と呼ばれる場所で砂の中に潜り、通りかかったケンシロウを待ち伏せして奇襲をかけようと企んだ。

 しかし、その稚拙な隠れ蓑はいとも簡単に見破られてしまう。砂の中から姿を現し、「フフ…よ〜〜ぐ 見破ったガニィ」と自信満々に素顔を晒したシエだったが、ケンシロウからは冷ややかな目で「オレはカニ料理は好みじゃないんだがな……」と一蹴されてしまう。

 それでもめげずに、両手の刃を振るう「交牙断随(こうがだんずい)」で襲い掛かり、ケンシロウを巧妙な罠に追い込もうとするシエ。しかし、当然すべて見切られてしまい、最終的には自分が仕掛けた巨大な虎挟みの罠に挟まれて自滅するという、あまりにもお粗末な最期を遂げた。

 食糧難の世紀末において「カニ料理は好みじゃない」とぜいたくを言うケンシロウのツッコミも秀逸だが、そもそもなぜシエがカニの仮装と砂潜りというコメディのような戦法に行き着いたのかが謎すぎる。

 過酷な修羅の国を生き抜くために彼なりに知恵を絞り、行き着いた究極のかたちが「カニ」だったのだとすれば、その涙ぐましい努力と残念すぎる結果には、同情すら覚えてしまう。

 

 『北斗の拳』において、ケンシロウの圧倒的な強さを引き立てるために散っていった哀れなザコキャラたち。彼らは決して強くはなかったが、生き残るために必死に知恵を絞り、それぞれ独自の奇策を編み出していた。

 過酷な世紀末の世界で這いつくばり、何とか生き延びようとしたザコたちの生き様。時には彼らのような“愛すべき脇役”にスポットを当てて原作を読み返してみると、また違った『北斗の拳』の面白さが見えてくるかもしれない。

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