人気漫画の実写化には、常に高いハードルがつきまとう。とくに独自の世界観を持ち、超人的なキャラクターが数多く登場する『週刊少年ジャンプ』(集英社)作品の実写化は、原作ファンの大きな期待も相まって一筋縄ではいかないだろう。ビジュアルやキャラクター像に少しでも違和感があれば、厳しい評価にさらされることも少なくないのだ。
しかし、そのようなプレッシャーをものともせず、まるで原作からそのまま抜け出してきたかのような、圧倒的な再現度を誇るヒロインも存在する。実写化のクオリティが向上した背景にはCG技術の進化なども挙げられるが、何よりそのキャラクターになりきるため、緻密な役作りや過酷なアクションに挑んだ女優たちの並々ならぬ努力があったからに他ならない。
そこで今回は、ジャンプ漫画の実写化作品において、見事なビジュアルと演技でファンを魅了した実力派女優たちを複数回にわたって紹介していく。
(第3回/全5回)
※本記事には各作品の内容を含みます
■箸が震えるほどの猛特訓で魅せた“死神”の覚悟…『BLEACH』朽木ルキア役:杉咲花
全世界でシリーズ累計発行部数1億3000万部を突破した、久保帯人さんの超人気漫画『BLEACH』。2018年に公開された実写映画版で、福士蒼汰さん演じる主人公・黒崎一護に死神の力を与え、共に悪霊・虚(ホロウ)との戦いに身を投じるヒロイン・朽木ルキアを演じたのが杉咲花さんだ。
ルキアは、人間ではなく「死神」という特殊な存在でありながら、芯の強さと人間的な深い愛情を持ち合わせた人気キャラクターである。
杉咲さんは身長153cmと小柄で、原作におけるルキアの身長144cmという設定ともイメージは近いだろう。しかし、世界中に熱狂的なファンを持つ作品だけに、杉咲さん自身も役が決まった際は喜びと同時に、“プレッシャーのほうが大きかった”と当初の不安な心境を吐露している。
しかし杉咲さんは、並々ならぬ原作へのリスペクトと徹底した役作りでその重圧を跳ね除けた。
立ち居振る舞いや表情を完璧にキャラクターへ寄せるため、原作漫画のコマを切り抜いて自身の台本に貼り付け、常にルキアの姿が視界に入るようにして撮影に臨んだという。ちなみにこの役作りへの工夫は、彼女が他の実写化作品に出演する際にも必ず取り入れているそうだ。
さらに杉咲さんを待ち受けていたのは、死神としての過酷なアクションシーンであった。
剣の達人という設定に説得力を持たせるため、ほぼ初心者の状態から1日5時間以上に及ぶ殺陣の猛特訓を敢行。木刀で練習した翌日には、箸を持つ手すらブルブルと震えてしまうほどの凄まじい筋肉痛に襲われたという。
撮影現場でも苦労は絶えなかった。アクションに必死になるあまり顔に力が入ってしまい、ルキア本来の“淡々とした表情”を保つことに苦戦したと明かしている。また、激しい殺陣の中で相手役である福士さんを怪我させてしまうかもしれないという恐怖心と闘いながらも、逃げずに剣を振り続けたそうだ。
そうした身を削る努力の結果、スクリーンには原作からそのまま抜け出してきたかのような、凛とした美しい朽木ルキアの姿があった。原作さながらに華麗な技を次々と繰り出すルキアの必殺技シーンは、本作屈指の見どころの1つだ。
序盤から鋭い剣さばきを披露し、その小柄な体からは想像もつかない気迫で巨大な虚に立ち向かう姿は、冒頭から観る者を圧倒した。その一方で、女子高校生としての落ち着いた制服姿も可愛らしく、死神としてのバトルシーンとのギャップも見事に表現されていた。
華麗なアクション技術を見事に習得し、死神としての冷徹さと内に秘めた人間らしさを絶妙なバランスで表現した杉咲さん。そのひたむきな熱演は、ド迫力のバトルアクションに人間ドラマの重みをもたらし、多くの観客の心を掴んだのである。



