■細田善彦と向井理、クセ強なふたりに挟まれる西畑大吾
ただ必死に生きてる姿って、こんなに眩しいんだなって思う。
そしてもう一人の主人公・黒崎(細田善彦)。原作通りの狂気度を感じさせる。過去のトラウマから誰よりも薬物に憎しみを持ち、裏社会撲滅のためなら過激な捜査も厭わない闇を抱えた男だ。
梅沢に対して暴力は当たり前、土足で家に上がり込んで容赦なく白湯をぶっかけたりとドSの極みのような男だが任務が成功したら「よくやった」と褒めるなど、絶妙にアメとムチを使い分けながら梅沢を操っていく。細田善彦の目力と無表情の怖さが黒崎の狂気を増幅させている。穏やかで優しいイメージのある、演技外の細田とのギャップもたまらない。
そしてもう一人、葛城(向井理)。出世欲とマトリへの対抗心から、梅沢に対してムチだけを振り回す高圧的な男だ。向井理の圧倒的な存在感とドスの効いた低音の声が葛城というキャラクターのリアリティをさらに増幅させている。
そんなクセの強い2人に挟まれているからこそ梅沢の小物感が、逆に愛おしくなってくるのだ。そして何より監督を務める品川ヒロシ監督の手腕が光っている。ド派手なアクションはもちろん、各洋画のオマージュなど、マニアにも刺さるようなこだわりを随所に感じさせる。
さらに原作との「取捨選択」も非常に上手い。原作漫画では過激な性的描写が多い作品なのだがショッキングなシーンはほとんど映像化せず音と表情と空気だけで伝える。見せないからこそ、薬物の怖さ、被害者の絶望、犯罪のリアルが伝わってくる。西畑大吾のファン層である10代~20代女性が多く見るドラマだからこそ単純な視覚での刺激ではなく、「こんなことがあったのかもしれない」という警告を残す。その配慮が素晴らしい。
脇を固めるキャストも素晴らしい。千葉のカリスマ芸人・加賀響(九条ジョー)は、胡散臭さと狂気を完璧に体現し、薬物で堕ちていく女子大生・葵(森田想)のリアルな演技と相まって、薬物犯罪の恐ろしさを強烈に印象づけていく。マトリの同僚たち(山谷花純、山下永玖ら)の軽妙なやり取りや、半グレの松原(平埜生成)の怖さと複雑さなど、細かいところまでこだわり抜かれている。
単なる刑事ドラマ、犯罪ドラマではなく、人間の弱さ、欲望、正義の曖昧さをえぐり出し、スリル、サスペンス、バイオレンス、人間模様、全てを味わうことができる、まさに一度観たら抜け出せない中毒性がある合法ドラマだ。
Netflixでも配信中。どれだけ見ても逮捕されることはないのでぜひ見ていただきたい。
■著者プロフィール
かんそう
ブロガー・ライター・作家。北海道の片隅で意味不明な文章を綴る長男。
著書に『書けないんじゃない、考えてないだけ。』『推すな、横に並んで歩け』がある。


