田中芳樹氏が手がけた壮大なスペースオペラ『銀河英雄伝説』は、銀河帝国と自由惑星同盟という2つの国家間の争いを描いた物語である。
銀河帝国の若き英雄ラインハルト・フォン・ローエングラムは、長年帝国を支配してきたゴールデンバウム王朝を打倒し、さらに銀河帝国と100年以上にわたって戦い続けてきた自由惑星同盟をも滅ぼしている。
しかし、ラインハルトが頭角を現して以降、同盟が滅亡するまでの道のりはあまりにも早かった。それまで帝国と同盟は長年力が拮抗していたにもかかわらず、わずか数年で滅亡したのである。
この異常なまでの同盟の衰退は、同国内に戦犯的な存在がいたことも理由として考えられる。両国の中間にあるフェザーン自治領が裏で手を引いていたこともあるが、国益を害する行動をとったり、戦時下に無能な行動をとったりする人物がいたことが、同盟の滅亡に拍車をかけた。
そこで今回は、自由惑星同盟滅亡の要因と考えられる、重要人物たちがしでかした行動について、振り返ってみたい。
※本記事には、作品の核心部分の内容も含みます。
■前代未聞の大惨敗を喫した作戦を立案した「アンドリュー・フォーク」
『銀河英雄伝説』という作品の中でも、とりわけ多くのヘイトを集める人物として知られているのがアンドリュー・フォークという男である。
役柄的に小説の読者やアニメの視聴者から嫌われるのは分からなくもないが、OVA版で彼の声を演じた古谷徹氏まで「一番嫌いなキャラ」と言ったほどだから大したものである。
フォークは、士官学校を首席で卒業したエリート軍人だが、エリート意識が強すぎて周りが見えず、高圧的な態度をとってしまう典型だ。彼の発言はことごとく他者を下に見ている感じで、「自分以外は皆無能」と言わんばかりの言動が目立つ。だが、実際に無能なのはフォーク本人だった。
彼の最大の罪は、銀河帝国領への無謀な侵攻作戦を立案したことである。
ヤンがイゼルローン要塞を陥落させ、これが和平への交渉材料になるかと思われたところに、大規模な侵攻作戦を推し進めたのである。
大艦隊で帝国領の奥深くまで侵攻するこの作戦には穴がたくさんあり、同盟の諸提督からさまざまな反対意見が挙がった。ヤンも補給線が伸び切った状態では、大艦隊が容易に分断されると作戦の不備を指摘するが、フォークは「なぜ分断の危機ばかり強調されるのか理解に苦しむ」と一笑に付したのである。
肝心の作戦内容について具体的な案を求められると、フォークは「高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処する」と発言。このあまりにも行き当たりばったりな指示は、彼を象徴する“迷言”として知られている。
案の定、フォークが立案した帝国侵攻作戦は大失敗し、同盟はウランフやボロディンといった優秀な提督をはじめ、2000万人を超える将兵が犠牲となる大惨敗を喫した。
この敗戦で人材面、物資面において致命的な打撃を受けた同盟は、事実上滅亡への道を決定づけられたともいえる。
なおフォークが嫌われる理由は、この惨敗だけではない。生き残ったフォークは退役後、地球教の陰謀に利用されてヤンを襲撃。彼の暴挙自体は失敗に終わったが、結果的にヤンが命を落とすことにつながってしまった。
『銀河英雄伝説』にはさまざまな嫌われキャラが登場するが、フォークほど全方面から嫌われた人物はいないかもしれない。


