■口の堅さは世紀末一? ラオウ戦の裏で抵抗したザコ

 「拳に曇り許さず!の巻」では、物語のクライマックスの1つ、フドウ対ラオウの死闘が描かれた。その裏側で、ザコとしては異例の強靱な精神力を見せたザコがいる。

 フドウが“鬼”として復活し、ラオウと激闘を繰り広げる中、ケンシロウはラオウの行方を追ってその居城にやってきた。そこにいたスキンヘッドのザコの額に指を突き立て、「ラオウはどこだ!?」と迫る。しかし、ザコは「だ…だれがてめえなんかに………」と反抗し、ケンシロウから強烈なビンタを食らって血を吐く。再びケンシロウがザコの額に指を当てるが、それでもザコは「へっへへなめんなよ」「おれは口がかてえんだ」と、抵抗を続けるのだ。

 仲間たちが次々とケンシロウに倒されていくのを目の当たりにしても、最後まで口を割ろうとしなかったこのザコ。最後まで拳王への忠誠心を見せたのは、あっぱれといえるだろう。

 最終的にもう1発激しいビンタを浴びたこのザコは、体を回転させながら、ついにラオウの居場所を白状してしまう。しかし、彼もまた殺される描写はなく、ケンシロウに全力で抵抗しながらも生き延びた、極めてまれなザコといえるだろう。

■暴力ではなく「食」で支配! 知略の将・コウケツ

 最後に紹介するのは、厳密には「ザコ」と呼ぶにはやや大物かもしれない男、コウケツだ。彼は拳法の腕前ではなく、卓越した“知恵”と“経済力”で乱世をのし上がった異色の存在だ。

 コウケツは元々、拳王軍で「馬係」を務める下っ端兵士に過ぎなかった。ラオウに媚びへつらい“下衆なドブネズミ”と罵られ蹴り飛ばされるという、屈辱的な過去を持つ。

 しかし、コウケツはその悔しさをバネに、「暴力(狼)の時代は終わり、これからは知恵と食料の時代が来る」と予見した。そして荒廃した土地を開墾し、食料を牛耳ることで、かつての拳王軍の猛者たちさえも飼い慣らすことに成功したのである。

 コウケツは、元拳王軍の将軍・バルガさえも農奴として自身の支配下に置いた。自らは直接戦わず、薬物で強化した人間「マイペット」を利用したり、巧妙な罠を駆使して戦うスタイルも、肉体派ばかりの世紀末においては異彩を放っていた。

 最終的にはケンシロウに敗れ、皮肉にも自らが仕掛けた重量感知式の罠にかかって“ドブネズミらしい死”を遂げたコウケツ。しかし、荒野を緑豊かな農地へと変貌させたその経営手腕は本物だった。

 もし道を誤らなければ、暴力に頼らない新しい復興のリーダーになれたかもしれない。非常に惜しいザコの1人である。

 

 『北斗の拳』に登場するザコたちは、単なる「やられ役」ではない。彼ら1人1人にも、その日を生き延びるための知恵や技術、そして歪んだかたちではあるが、確固たるプライドがあったのだ。

 今、あらためて彼らの生きざまに注目して読み返してみると、過酷な世紀末を生き抜く術のヒントが隠されている……かもしれない。少なくとも、彼らのような存在がいたからこそ、ケンシロウやラオウといった強者たちの存在がより一層輝きを増したことは間違いないのである。

  1. 1
  2. 2
  3. 3