「生きてたんかい!」漫画を読んでいて、思わずそう叫んでしまった経験は誰しもあるのではないだろうか。逃げ場のない絶体絶命の状況、確実な死を思わせる描写、そして涙なしには見られない別れの場面……。物語から完全に「退場」したと思っていたキャラクターが再び姿を現す瞬間は、読者にとって最大級の衝撃と興奮をもたらすものである。
今回は、数ある名作の中から、死の絶望を乗り越えて鮮やかに復活を遂げた、特に印象的な3人のキャラクターを紹介したい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■爆炎に包まれた偽装工作…『鋼の錬金術師』マリア・ロス少尉
まずは、荒川弘氏による不朽の名作『鋼の錬金術師』から。本作において、その再登場に誰もが驚かされたキャラクターといえば、マリア・ロス少尉が挙がるだろう。
マース・ヒューズ中佐殺害という濡れ衣を着せられ、拘束されたロス少尉。憲兵隊による執拗な取り調べに加え、新聞ではすでに犯人であるかのように報じられるなど、彼女は完全に逃げ場のない窮地へと追い詰められていた。
そんな中、彼女は決死の脱獄を果たすが、暗い路地裏で立ちはだかったのは、焔の錬金術師ことロイ・マスタング大佐であった。「マリア・ロスだな」という短い確認の後に指が鳴らされると、その直後、無慈悲な爆炎が彼女の姿を包み込んだのである。
立ち上がる炎を目にし、現場へと駆けつけた主人公のエドワード・エルリック。しかし、彼の目に飛び込んできたのは、路地裏に残された無残な黒焦げの死体だった。親友の仇を討つという私怨に駆られた凶行だったのか……そのあまりに冷酷な振る舞いに、我々読者もマスタングという男に対する信頼が揺らいだはずだ。
しかし、物語には最高のどんでん返しが用意されていた。マスタングの指示に従い、砂漠地帯のクセルクセス遺跡へと向かったアレックス・ルイ・アームストロング少佐とエド。そこでエドの前に姿を現したのは、死んだはずのマリア・ロス少尉その人であった。
そう、あの夜の出来事は、軍上層部の陰謀から彼女を救い出すために仕組まれた、マスタングによる壮大な偽装工作だったのである。エドやアームストロング少佐だけでなく、我々読者もまた、マスタングという男に鮮やかに「一杯食わされた」のだった。
■“出荷”という絶望を越えた奇跡の再会『約束のネバーランド』ノーマン
次は、白井カイウ氏(原作)、出水ぽすか氏(作画)によるダークファンタジーの傑作『約束のネバーランド』である。本作において、その再登場に誰もが驚かされたキャラクターといえば、ノーマンをおいて他にいないだろう。
エマやレイとともにグレイス=フィールドハウスからの脱獄を計画し、その類まれなる知能で仲間たちを導いてきたノーマン。しかし計画の半ばで、彼は無情にも「出荷」の日を迎えてしまう。
鬼の食料として育てられた子どもたちにとって、「出荷」とはすなわち「死」を意味する絶対のルール。門の向こうへと静かに消えていく彼の姿は、読者に物語からの完全な退場を確信させ、深い絶望を感じさせた。
その後、残されたエマたちはノーマンの意志を継ぎ、決死の思いでハウスからの脱獄を成功させる。外の世界を彷徨う中で出会った人を食べない鬼のムジカやソンジュ、地下シェルターでの「オジサン」ことユウゴとの遭遇。さらに、過酷なゴールディ・ポンドでの死闘。彼らが懸命に生き抜く姿が描かれる一方で、読者の心には、常にノーマンを失った喪失感が付きまとっていたはずだ。
しかし、物語中盤。彼の生存が突如として描かれる。「Λ(ラムダ)7214」という特殊な農園で研究に協力させられていたノーマン。『週刊少年ジャンプ』での連載においては、約1年ぶりとなる待望の復活であった。さらに物語が進むと、彼は食用児たちのレジスタンスを率いる謎の人物「ウィリアム・ミネルヴァ」として、ついにエマたちとの劇的な再会を果たすのである。
だが、その再会は純粋な喜びだけではなかった。レジスタンスの「ボス」として現れた彼の顔には、かつての穏やかな笑顔の裏に、どんな手段を使っても鬼を殲滅するという冷徹で烈しい決意が秘められていたのだ。ノーマンの再登場は、読者の願いが叶った歓喜と同時に、物語にさらなる緊張感をもたらす転換点となったのである。


