■「56kgの病人」から、わずか1カ月で「パワフルな巨漢」への驚異的変貌

 彼の役作りにおける肉体改造は凄まじい増量だけではない。その裏にある減量もまた、壮絶を極める。その象徴的な作品が、2015年のドラマ『天皇の料理番』だ。

 TBSテレビ60周年特別企画として制作された本作で鈴木さんが演じたのは、佐藤健さん演じる主人公の兄・秋山周太郎。不治の病に侵され、静かに命を削られていく人物である。この役のため、鈴木さんは約半年で20kgもの減量を敢行した。

 回を追うごとに頬がこけ、首筋の骨が浮き出ていく姿は、見ていて痛々しいほどだった。鈴木さんは“この物語だったら自分の半年を捨てても良い”と、プライベートな時間を削ってすべてを減量に捧げたという。最終的に体重を56kgまで落として死の影をまとったその演技は、観る者の胸を強く締め付けた。

 しかし、本当の衝撃はその直後にあった。鈴木さんは同年公開の映画『俺物語!!』の撮影に向け、わずか40日間で30kg増量するという、常軌を逸した挑戦に打って出たのである。

 原作:河原和音さん、作画:アルコさんの漫画を原作とする本作で、身長約2m、体重約120kgという設定の巨漢の高校生・剛田猛男を演じるため、彼は1日に何度もパンを口に詰め込み、その巨躯を維持したという。

 死を待つ病人を演じていた人物が、わずか1カ月後にはエネルギッシュな巨漢の高校生へと変貌を遂げてみせたのだ。

■「維新の豪傑」に宿した重厚な魂、そして「伝説のスイーパー」へ注ぐ原作愛

 その後も、彼の肉体改造の伝説は終わらない。2018年のNHK大河ドラマ西郷どん』は、鈴木さんにとって大河ドラマ初出演にして初主演という記念すべき大役となった。

 その期待に応えるべく、彼はさらなる増量を敢行する。物語の進展に合わせ、晩年の恰幅の良い西郷隆盛を再現するために体重を100kg近くまで増やし、まさに「維新の英傑」と呼ぶにふさわしい、どっしりとした圧倒的な存在感を放った。

 そして記憶に新しい2024年、Netflix映画『シティーハンター』の冴羽獠役では、肉体改造に加え、驚くべき「原作ファン目線」のこだわりを見せている。

 銃の解体シーンひとつとっても、暗闇でセリフを言いながら完璧にこなせるまで、指先に動きを叩き込んだという。さらに、愛車を操る獠になりきるため、オートマ限定だった免許をマニュアル免許に切り換えるという徹底ぶりであった。

 北条司さん原作の、ギャグとシリアスのギャップが魅力の本作において、コンプライアンスが厳しい現代での実写化という難題にも、彼は真正面から向き合った。

 鍛え上げられた肉体で披露する渾身の「もっこりダンス」から、息を呑むほどに格好いいクールなアクションシーン。原作への深いリスペクトを込めて、令和の時代にふさわしい冴羽獠像をアップデートしてみせたのである。

 この徹底した役作りがあるからこそ、我々は彼の演じるキャラクターを、疑いなく信頼することができるのだ。

 

 改めてその歩みを振り返ると、鈴木亮平さんという俳優がいかに想像を絶する道のりを歩んできたかが分かる。特筆すべきは、その肉体の振り幅である。ある時は役作りのために体重を極限まで削ぎ落とし、またある時は100kg近い重厚な巨漢へと姿を変える。

 この常人離れした役作りは、演じる役への最大限のリスペクトの表明であり、作品を受け取る視聴者への誠実なメッセージでもあるように思う。

 最新作の日曜劇場『リブート』では、さらにどんな姿を見せてくれるのだろうか。我々の想像を軽々と超えていくその変幻自在な姿を、これからもワクワクしながら見続けたい。

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