俳優の福士蒼汰さんが主演を務めるフジテレビ系ドラマ『東京P.D. 警視庁広報2係』が、硬派な社会派路線を突き進んでいる。本作は、従来の警察ドラマが主眼とする犯人逮捕や事件解決そのものよりも、その裏側にある報道対応や情報統制、組織内の摩擦を克明に描く点で独自性が際立っている。
※本記事には作品の内容を含みます
■主人公の視点を通じ描かれる「広報」の仕事
福士さんが演じるのは、所轄の刑事から警視庁広報課2係へ異動になった巡査部長・今泉麟太郎。広報課の中でも、音楽隊を率いる1係やメディア協力を担う3係に「華やか」なイメージがある一方、今泉が配属された2係は報道対応や事務仕事がメインの地味な部署だ。
着任早々、上司からは「刑事の経験なんてここでは全然通用しないよ」と突き放される今泉だが、視聴者も彼の視点を通して「広報」という仕事の実態を知ることになる。
まず、警察がマスコミに協力する大前提として、国民の「知る権利」が存在する。事件を公に知らせる義務があるため、1日2回、記者が各課の課長から情報を聞き出す時間が設けられているのだ。
しかし、記者との関係性は単なる情報提供に留まらない。「記者クラブ」には新聞六社会、報道記者クラブ、テレビ記者会という3つが存在し、広報は膨大なメディア対応に奔走する。仮にどこかから情報が洩れ、1社がすっぱ抜いた際、後追いする他社の調整役を担うのも2係の役目だ。
記者と酒を酌み交わすのも重大な仕事の1つであり、そこには高度な情報戦も存在する。あえて記者に情報を漏洩してニュースにさせることで世論を喚起し、警察が捜査せざるをえない状況を作ることもあるという。さらに、広報課内にある「リモコン室」に全ての110番通報の情報がリアルタイムで寄せられていたのも驚きだった。
■警察ドラマファンを唸らせるリアリティ
原案・プロデュースの安永英樹さんは警視庁記者や報道記者としての実経験を持ち、その知見が細部に反映されている点が本作の大きな特徴である。
特に第2話で描かれた、現職警察官によるストーカー殺人事件と組織による隠蔽工作は、過去に実際に起こった事件を想起させる内容だ。不祥事を揉み消すため無実のホームレスを犯人に仕立て上げるなど、警察組織の歪んだ権力構造が生々しく描かれていた。
第3話と第4話では、千葉の山中で女性5人の遺体が見つかった事件を通じ、実名報道の是非という重いテーマを提示した。
実名報道によって遺族に取材が殺到し、SNSで個人情報が拡散される弊害を描く一方で、匿名に切り替えた途端に世間の関心が急速に薄れていくというジレンマを鋭く指摘している。メディアを一方的な悪として描くのではなく、報道と警察、そして情報の受け手である視聴者の三者が織りなす危うい関係性を丁寧にすくい上げているのだ。
こうした徹底したリアリティに対し、SNS上では「今期イチのダークホース」「踊る大捜査線とはまた違ったアプローチで警察のリアルに斬り込んできた」「単にメディアを悪者にするだけではなくもう一歩踏み込んだ描き方」といった称賛の声が続出。視聴率は派手ではないものの、内容を重視する層からの満足度は非常に高いようだ。
共演陣には緒形直人さんや竹財輝之助さん、津田寛治さんといった実力派が揃い、広報課という一見地味な部署の空気感を重厚に表現している。本多力さんや正名僕蔵さんといった俳優陣が、普段のコミカルな印象を抑えた真剣な演技を見せている点も、作品の質を高めている。
作中に登場する「広報は刑事にはない視点を持ってる。警察は組織だ。中枢に行くほどただ犯人を捕まえるだけじゃいかない。そんなときに広報の視点は役に立つ」という言葉は、警察における「広報」という部署の重要さを端的に示している。警察ドラマの新たな地平を切り拓く『東京P.D. 警視庁広報2係』は、まさに新機軸と呼ぶにふさわしい一作だ。


