川原正敏氏による格闘漫画『修羅の門』(講談社)は、主人公の陸奥九十九に数多くの格闘家が挑み、白熱した戦いを繰り広げていく物語である。
ルールの定められた異種格闘技戦のみならず、時には何でもありの戦いも描かれ、相手を確実に殺すための技も存在する。特に九十九が使う陸奥圓明流には数多くの人殺しの技があり、劇中で実際に相手を死に至らしめたこともある。もちろん、陸奥と対峙する者たちもそれぞれ必殺技を持っており、相手の技をいかに破るかが勝敗の鍵を握る。
本作最強の必殺技といえば、陸奥圓明流に伝わる「四門(朱雀・玄武・白虎・青龍)」だが、その他にも強力な技は数多く存在する。
今回はそれらの技を、突き技、打撃技、蹴り技などさまざまなジャンルに分類し、作中最強の必殺技はどれなのか考察していく。物語上、どうしても陸奥圓明流の技に偏りそうだが、さまざまな角度から挑戦者たちの技も取り上げていきたい。
※本記事には作品の内容を含みます。
■かするだけでも大ダメージ「無空波」
まず紹介したいのが、陸奥圓明流が誇る突き技の奥義「無空波」。これは拳を高速振動させることによって強力な衝撃波を発生させ、相手の体の内部に大ダメージを与える非常に効果的な技である。
この技の恐ろしいところは、見えない衝撃波ゆえに回避が難しく、かすっただけでも相手に打撃を与えられる点にある。似たような技として「虎砲」があるが、こちらは拳をしっかり当てなければ意味がないため、実用性の面でも無空波の方が上だろう。
初披露されたのは九十九と神武館の海堂晃の戦いである。海堂は放たれた無空波を虎砲だと思い、ギリギリでかわす。わずかにかすったもののダメージはないと判断し、そのまま反撃に移るのだが、その直後に海堂は倒れてしまう。無空波が生み出した衝撃波が、彼の体内にしっかりと伝わっていたのである。
海堂との二度目の戦いでも無空波は用いられたが、その時の海堂はどうにか踏みとどまった。海堂クラスの天才であってもダメージを半減させるのがやっとで、初見の相手ならほぼ不可避の奥義といえるだろう。
■頭蓋をも割る「菩薩掌」
次に紹介するのは、打撃技の中でも少し特殊な掌打の技、「菩薩掌」だ。これは鬼道館の片山右京が放った必殺技である。
その原理は、掌と掌で相手の頭を挟みこむような体勢をとり、その瞬間、両の掌打によって数百回と頭部を打ち合わせる。頭の片側を叩き、反対側に飛ばされたところを逆の手で叩き返すという攻撃を瞬時に繰り返すのだ。
これによって相手の頭部を高速で揺らし、一瞬のうちにパンチドランカーのような状態にしてしまう恐ろしい技である。
この技の餌食となった相手は、食らった瞬間に顔面から流血して倒れた描写があり、その破壊力は明らかだ。しかもこれは手を抜いての結果であり、片山が本気で繰り出せば相手の頭蓋が割れるという。
さらにこの技は、陸奥圓明流の「龍破」が起こす“かまいたち”さえも叩き潰してみせた。不可避と思われた技を防ぐ手段としても機能したことから、非常に優れた技だといえる。
しかし、菩薩掌にも弱点がある。九十九は、右京の両手が頭に触れる瞬間に上から両手を押し付け、頭部を揺らすための隙間を潰すことで技の発動を封じた。九十九ほどの相手には対策をとられてしまったものの、陸奥圓明流の技以外の必殺技の中では最強クラスの、恐ろしい殺傷力を誇る技だ。
■左右ほぼ同時に蹴りを繰り出す「双龍脚」
蹴り技の中で印象的なのが、海堂晃の得意技である「双龍脚」だ。これは、左右の回し蹴りを同時に叩き込むという驚異的な技である。
相手の意識はまず右の回し蹴りに向かうため、死角から放たれた左の回し蹴りに対応できず、まともに食らってしまう。九十九も初めてこの技を繰り出された時は、防ぎきることができなかった。
二度目の攻撃はギリギリで見切ったものの、高速で左右ほぼ同時に襲いかかる蹴りを避けるのは至難の業。九十九クラスの実力者でなければかわすことはできないだろう。
また、神武館空手の南米王者であるイグナシオ・ダ・シルバは、この技を変形させて使用していた。その際、あの九十九がガードするので精一杯の様子だったことからも、この技の有用性がうかがえる。


