少女漫画には主人公の恋路を邪魔するライバルキャラが付き物だが、中には見ているだけで腹が立って仕方ない、“憎たらしい女”も登場する。あざとい仕草で男性を手玉にとったり、裏表のある態度で見事に立ち回ったりと、その計算高さには呆れてしまうほどだ。
そうしたアクが強い悪女たちは、その漫画が実写化された時にも強烈な存在感を放つ。そして演じた人の演技力が高ければ高いほど、視聴者のストレスは高められていくことになる。今回は、少女漫画の実写化作品で、可愛さ余って憎さ百倍となるような、恋のライバル役を見事演じた女優について、振り返っていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■息をするように嘘をつく…『花より男子』戸田恵梨香
神尾葉子さんによる『花より男子』(集英社)の憎まれキャラといえば、中島海だろう。海は一見したところ無邪気で人懐っこく、人好きのするタイプだ。しかし、その裏には計算高さが隠されており、周囲を思い通りにコントロールしようとする。
そんな海を実写ドラマ版で演じたのが、演技派女優として知られる戸田恵梨香さん。ピュアな女性から非情な悪役、エキセントリックなキャラまで、実に幅広い役をこなしてきた戸田さんだが、そのすぐれた表現力は当時から存分に発揮されている。
海は、主人公・牧野つくしの恋人である道明寺司が記憶喪失になった際、彼を狙って近付いてきた。そして、つくしが持ってきた手作りクッキーを、なんと自分が作ったことにしてしまう。しかも勘違いした道明寺が「俺たち付き合ってたのか?」とたずねると、一切の迷いなく笑顔でキスする始末だ。
その後、道明寺がつくしを気にかける素振りを見せると、「ひどいよ」と涙。ポロポロと涙を流ししゃくり上げる姿は一見儚げでかわいそうだが、ひどいのは海の方である。
海は息をするように嘘をつく。その姿があまりにも自然なので、そもそも悪気があるのかすら疑問に思ってしまうほどだ。戸田さんの浮かべる笑顔が無邪気そのもので、悪意のかけらも感じられないのがまた余計に憎たらしい。この絶妙な“ムカつき”は、彼女でなければここまで見事に再現できなかっただろう。
小栗旬さん演じる花沢類は海を忌み嫌っており、終始敵意むき出しだった。彼がいなければ、海の登場シーンはもっとストレスフルなものだったかもしれない。
■リアルなあざとさが印象的『NANA』紗栄子
続いては、矢沢あいさんの漫画を原作とする実写映画『NANA』で、主人公のひとりである小松奈々のライバル・川村幸子を演じた紗栄子さん(当時の名義は「サエコ」)だ。
幸子といえば、「わざとだよ?」というセリフで知られる、非常にあざとく可愛らしく、小悪魔的な魅力にあふれたキャラクターだ。大きく丸い目にふっくらとした唇、ベリーショート、小柄ながらスタイル抜群と、ビジュアル的にも破壊力抜群である。
「わざとだよ?」は、奈々の彼氏・遠藤章司と幸子が終電を逃した際に出てくる。ハイヒールの靴が脱げてしまった幸子に対し、走ると分かっているのになぜそんな靴を履くのかと呆れる章司。すると、幸子は少し間を開けた後、章司をまっすぐに見上げて例の言葉を言い放つのだ。
この有名なシーンは、もちろん実写版にも出てくる。しかし、原作の幸子の表情がいかにもあざとく、キラキラと描かれていたのに対し、紗栄子さんはどちらかというと自然体の姿を見せていた。目線も章司に向けるのではなく下の方に落とされ、声のトーンも低めだ。あからさまでなかったからこそ、余計に“あざとさ”が際立つ場面になっていた。
紗栄子さんの演技によって、よりいっそう“リアルな悪女感”が吹き込まれた幸子というキャラクター。原作以上に生々しさを感じた視聴者も多かったのではないだろうか?


