実写化作品の成否を分ける要素は多々あるが、素晴らしいコスチュームが完成した時点で、すでに大きなハードルをひとつ越えていると言っても過言ではない。キャラクターが画面に姿を現した瞬間、観る者の目を奪うことができるか。その第一印象が、作品への没入度を大きく左右するのである。
原作を知っているファンであればあるほど、衣装の再現度に注目するのは当然だろう。色合いやシルエット、全体の印象がわずかに違うだけで違和感を抱くこともある一方、俳優の持つ雰囲気や動きと衣装がぴたりと噛み合った瞬間には、理屈を超えた説得力が生まれる。衣装とは、キャラクターに命を吹き込み、その存在を観る者に“信じさせる”ための大切なスイッチなのだ。
今回は、魅惑的なコスチュームによってキャラクターの魅力を最大限に引き出し、「実写化」を成功に導いた女優たちをピックアップ。シリーズで彼女たちの圧倒的な存在感と印象的な着こなしを振り返っていきたい。
※本記事には作品の内容を含みます
(第5回/全5回)
■赤いハイヒールと巫女服姿…北川景子さんの『美少女戦士セーラームーン』セーラーマーズ
本シリーズを締めくくるのは、今や日本を代表する女優の北川景子さんだ。彼女の俳優としてのデビュー作であり、今なおファンの間で語り継がれる伝説的な作品、それが2003年から放送されたテレビドラマ版『美少女戦士セーラームーン』である。
武内直子さんが手がけた漫画を原作とし、世界的な人気を博した本作の実写化は、当時、衣装の再現を含め極めてハードルの高い挑戦であった。
国民的人気作品の実写化だけに、セーラー戦士役のオーディションには全国から1100人以上の応募者が殺到したという。その熾烈な選考を勝ち抜いたのが、沢井美優さん、浜千咲(現・泉里香)さん、北川景子さん、安座間美優さん、小松彩夏さんという、後にそれぞれが芸能界で大きく羽ばたくことになる5人であった。
その中で北川さんが演じたのは、クールでミステリアスな美少女、火野レイ/セーラーマーズだ。本作は細部に至るまで原作へのリスペクトが貫かれており、武内さんによる原作「新装版」のデザインが衣装のベースとなっている。北川さんが赤いハイヒールを履き、凛然としたセーラー服姿でカメラの前に立った瞬間、そこには確かに「火星の守護を持つ戦士・セーラーマーズ」が降臨していた。
劇中で完璧なセーラーマーズを体現していた北川さんだが、当時はアクションシーンに少し苦手意識があったと明かしている。特にハイヒールを履いた状態でのハイキックに苦戦し、スタッフから居残りで練習を命じられたという。
また、変身後の姿のみならず、日常の装いにおいてもキャラクターの個性が光っていた。主人公の月野うさぎとは別の学校に通うレイは、原作同様にブレザー型の灰色セーラー服を披露。さらに、レイの実家は神社であり、当時17歳の北川さんが着る白衣と緋袴の巫女服姿は、今となってはファンにはたまらない姿だろう。
北川さんは後年、自らにとって本作を「これまでの人生で一番成長できた、ターニングポイント」に挙げ、「この1年間で鍛えてもらったことは、すごくいい経験だったなと思います」と語っている。
その言葉を裏付けるように、放送から20年以上が経過した現在でも、当時のキャスト陣「戦士会」の交流が続いていることは有名だ。2023年に放送された特別番組『セーラー戦士 20年目の同窓会』で再集結した5人は、カメラを通しても仲の良さが伝わり、表面的な共演者の関係を超えた本物の絆を感じさせてくれた。
今なお、本作について声をかけられることが多いという彼女たち。「作品の持つ力」を改めて再確認したと語り、番組のエンディングで揃って「出会えてよかった」としみじみと語り合う姿は、観る者の胸を熱くさせる非常に印象的な光景であった。キャストとファンが共に歩んだ20年。その幸福な結びつきこそが、本作が持つ特別な力だろう。


