実写化作品の成否を分ける要素は多々あるが、素晴らしいコスチュームが完成した時点で、すでに大きなハードルをひとつ越えていると言っても過言ではない。キャラクターが画面に姿を現した瞬間、観る者の目を奪うことができるか。その第一印象が、作品への没入度を大きく左右するのである。
原作を知っているファンであればあるほど、衣装の再現度に注目するのは当然だろう。色合いやシルエット、全体の印象がわずかに違うだけで違和感を抱くこともある一方、俳優の持つ雰囲気や動きと衣装がぴたりと噛み合った瞬間には、理屈を超えた説得力が生まれる。衣装とは、キャラクターに命を吹き込み、その存在を観る者に“信じさせる”ための大切なスイッチなのだ。
今回は、魅惑的なコスチュームによってキャラクターの魅力を最大限に引き出し、「実写化」を成功に導いた女優たちをピックアップ。シリーズで彼女たちの圧倒的な存在感と印象的な着こなしを振り返っていきたい。
※本記事には各作品の内容を含みます
(第4回/全5回)
■極限状況下の献身! 夏菜さんの『GANTZ』岸本恵
奥浩哉さんによる漫画『GANTZ』は、死んだはずの人間たちが謎の黒い球体「ガンツ」に召還され、異形の“星人”と戦うという過酷な世界観で読者を圧倒した。
2011年に前後編2部作として公開された映画『GANTZ』および『GANTZ PERFECT ANSWER』。この非日常的なSF世界を象徴する大きな要素の1つが、戦士たちが身にまとう漆黒の「ガンツスーツ」であったと言えるだろう。
なかでも夏菜さんが演じた岸本恵というキャラクターを語る上で、避けて通れないのが“初登場の衝撃”だ。
二宮和也さん演じる玄野計らが集められた無機質な「ガンツ部屋」に、自ら命を絶った直後の岸本が一糸まとわぬ姿のまま転送されてくる。
原作でも極めて印象的なこのシーンは、黒い球体から放たれた青い光によって粒子の重なりが少しずつ身体を形作っていく描写と共に、実写ならではの生々しいリアリティをもって鮮烈なインパクトを与えた。
そして他に身を覆うものがなかった彼女が纏うことになったのが、漆黒のガンツスーツである。身体のラインを極限まで強調するタイトなシルエットは、原作特有の色気と格好良さを、忠実にスクリーンに写し出していた。
衣装デザイナーの竹田団吾さんが手掛けたこのスーツは、1着あたりの製作費が約50万円にものぼる精巧なものである。しかし、夏菜さんはこの衣装について「着ているだけだと寒くて、動くと暑い。撮影していて、苦しいものがありました」と語っており、美しい見た目とは裏腹に、着心地はよくなかったことがうかがえる。
興味深いのは、この衣装が「寒い暑い」といった物理的な負担だけでなく、演者の精神面にも影響を与えていた点だ。劇中で身体能力を飛躍させる設定の通り、夏菜さん自身も“スーツを纏うだけで自分が格好良く、強くなったように錯覚した”という。
意識しないと動きにキレが出過ぎてしまい、本来は儚い存在であるはずの岸本らしからぬ力強いアクションになってしまうため、その抑制に苦労したというエピソードは、コスチュームの力の偉大さを物語っている。
劇中では幾多の星人から彼女の命を守ってきたスーツだが、物語の終盤、実写版最強クラスの敵・千手観音から愛する加藤勝を守るため、彼女はその身を投げ出す。スーツごと無数の刃に貫かれ、その命を散らす最期の瞬間。無機質で冷たいはずの黒いスーツに包まれながらも、彼女が見せたあの献身的な姿は、今も多くの観る者の心に深く刻まれている。


