実写化作品の成否を分ける要素は多々あるが、素晴らしいコスチュームが完成した時点で、すでに大きなハードルをひとつ越えていると言っても過言ではない。キャラクターが画面に姿を現した瞬間、観る者の目を奪うことができるか。その第一印象が、作品への没入度を大きく左右するのである。
原作を知っているファンであればあるほど、衣装の再現度に注目するのは当然だろう。色合いやシルエット、全体の印象がわずかに違うだけで違和感を抱くこともある一方、俳優の持つ雰囲気や動きと衣装がぴたりと噛み合った瞬間には、理屈を超えた説得力が生まれる。衣装とは、キャラクターに命を吹き込み、その存在を観る者に“信じさせる”ための大切なスイッチなのだ。
今回は、魅惑的なコスチュームによってキャラクターの魅力を最大限に引き出し、「実写化」を成功に導いた女優たちをピックアップ。シリーズで彼女たちの圧倒的な存在感と印象的な着こなしを振り返っていきたい。
※本記事には作品の内容を含みます
(第3回/全5回)
■現代版にブラッシュアップ!加藤小夏さんの『ウイングマン』美少女アオイ
1980年代の『週刊少年ジャンプ』(集英社)を彩った桂正和さんのデビュー作にして代表作『ウイングマン』。その生誕から40周年という記念すべき節目の年にあたる2024年、待望の実写ドラマ化が実現した。
本作は単なる懐古的な企画ではなく、原作者自らが総監修として「桂正和作品を現代の映像としてどう成立させるか」という課題に真っ向から挑んだ野心作である。
この挑戦の核となるヒロイン、異次元世界ポドリムスからやって来た美少女・アオイ(夢あおい)役に抜擢されたのが、加藤小夏さんだ。加藤さんはドラマ『I”s(アイズ)』(2018年〜2019年)に続き、桂作品の実写化への出演は二度目となる。キャラクター造形の根幹にある「桂正和イズム」を深く理解し、体現できる稀有な存在としての起用であった。
原作者である桂さんが制作の深部にまでかかわった本作において、大きなテーマとなったのがコスチュームの再現であった。80年代漫画のヒロインを現代のドラマに登場させるにあたり、桂さんは“他のデザイナーさんがやって『原作と違う』と言われるよりは、自分がやったほうが原作ファンも納得するだろう”と、自ら衣装デザインを主導した。その覚悟とこだわりは、画面に映るアオイの姿から明確に伝わってくる。
原作におけるアオイは、鮮やかな青い髪と露出度の高いビキニ風の衣装がトレードマークであったが、実写版では「コスプレ感」を排除し、実在としてのリアリティを追求。髪色は神秘的な銀髪へと大胆に変更された。
そして最大の注目点は、白を基調とした新コスチュームのデザインだ。左右非対称のワンショルダーや、風になびく優雅なマント状のパーツを組み合わせたシルエット。オリジナル版を踏襲しつつ、地上波放送における表現の限界を見極め、長年のファンを裏切らない絶妙なバランスが保たれている。この緻密に計算されたコスチュームが、加藤さんの持つクールな美しさを最大限に引き出していた。
そのコスチュームが最も印象的に示されるのが、第1話冒頭の登場シーンである。異次元の命運を握る「ドリムノート」を抱えたアオイが、次元の狭間から我々の住む三次元(地球)世界へと、意識を失ったまま空から舞い降りてくる。穢れのない白いスーツが画面に映し出された瞬間、新しい物語の幕開けに誰もが胸を高鳴らせたはずだ。
こうした衣装の力に加え、加藤さんの瑞々しい演技がアオイに命を吹き込んだ。役作りに際し、桂さんから「1回全部忘れてやってくれ」と言葉をかけられたという加藤さん。
その助言を糧に彼女が演じたのは、原作の魅力はそのままに、実写ならではのリアルな感情を抱く女性としての姿であった。
父や故郷を救いたいという切実な願い、そして主人公・広野健太への揺れ動く恋心。白いコスチュームに包まれた彼女のひたむきな姿は、かつて少年だった大人たちだけでなく、初めてこの物語に触れる若い世代の心をも強く揺さぶったことだろう。


