憎悪、復讐、暴走…ガンダム史に刻まれた「闇落ち」という悲劇 ファンの心をえぐった「エグい豹変」も…の画像
DVD「新機動戦記ガンダムW 04」(バンダイナムコフィルムワークス) (C)創通・サンライズ

 『ガンダム』シリーズの長い歴史の中には、何らかの出来事をきっかけに、それまでと別人のような凶行に及んでしまう、いわゆる「闇落ち」キャラが存在する。

 現在公開中の新作映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』の主人公であるハサウェイ・ノアや、OVA『機動戦士ガンダムUC』に登場したリディ・マーセナスなどは、ガンダム作品の代表的な闇落ちキャラとして有名だろう。

 それぞれの闇落ちした要因はさまざまだが、彼らの豹変ぶりや凶行シーンが忘れられないというファンも多いだろう。そこで今回は、個人的に印象に残っている『ガンダム』シリーズの闇落ちキャラをピックアップ。どのような悲劇が生まれてしまったのかを振り返りたい。

※本記事には、各作品の核心部分の内容も含みます。

■心優しき青年カトルが“憎悪”にとらわれ凶行及ぶ…!?

 テレビアニメ『新機動戦記ガンダムW』における5体の主役級ガンダムの1機、「ガンダムサンドロック」のパイロットがカトル・ラバーバ・ウィナー。彼は、コロニーに強い影響力を持つ大富豪の家系に生まれながら、平和のために戦うことを選んだ心優しき青年である。

 コロニー出身のカトルは「地球圏統一連合」と、その武力を担う秘密結社「OZ」に抑圧されるコロニーのために立ち上がるが、戦争を避けようとする父親のザイードと対立してしまう。

 その後カトルは地球での激しい戦いに身を投じ、愛機サンドロックを失いながらも宇宙に戻って、父親のザイードと再会。しかしOZへの協力を拒んだザイードは、OZに懐柔されたコロニーの人々の身勝手な行動によって抹殺された。

 懸命に守ろうとしてきた人々に裏切られてカトルの心は壊れてしまい、ウィナー家の財力を投じて、禁忌とされるMS「ウイングガンダムゼロ」を建造する。

 このウイングゼロには、勝利を得ることを最優先に、常人には到底扱えない過大な負荷をかける戦略インターフェース「ゼロシステム」が搭載されていた。この驚異のシステムによって憎悪や悲しみの感情を増幅されたカトルは、人が変わったかのように凶悪な言動を繰り返し、コロニーへの無差別な破壊活動を開始してしまうのである。

 しかし、かつて心を通わせたトロワ・バートンの捨て身の説得によって、カトルはウイングゼロから脱出。大きな犠牲を出しながらも正気を取り戻し、自責の念から真の敵であるOZとの戦いに再び身を投じるのだった。

■絵を愛する面倒見のいい少年ライドがたどった「悲しい末路」

 テレビアニメ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』に登場した少年兵のライド・マッスは、主人公の三日月・オーガスが所属する民兵組織「鉄華団」のメンバー。鉄華団はそのメンバーの多くが少年、または身寄りのない孤児たちであり、ライドは年下のメンバーの面倒をよくみていた。

 またライドには絵心があり、鉄華団の旗揚げの際には団章のデザインを任されるほど。モビルスーツのノーズアートなども担当し、平和な世の中でまともな指導を受けることができたなら、芸術面で大成していたかもしれない。

 しかし過酷な環境を生きる鉄華団の中で、ライドは最前線で戦い続ける三日月に憧れ、モビルスーツのパイロットとして戦いに身を投じていく。

 そして物語終盤、鉄華団の団長であるオルガ・イツカの護衛をしていたが、そのとき敵の襲撃を受け、オルガを死なせてしまう。しかもライド自身は、護衛対象だったオルガに庇われて生き残った。

 その後、鉄華団は壊滅するが、三日月たちが命を捨てて臨んだ戦いにより、ライドを含む多くのメンバーが生き延びることになる。

 しかし、目の前で団長を死なせてしまったライドの無念と後悔は、彼の心を強烈な復讐心に染めた。戦いが終わって数年後、ライドはオルガを襲った事件の首謀者であり、武器商人として甘い汁を吸っていたノブリス・ゴルドンを襲撃。トイレの個室でオルガの名前すら覚えてすらいなかったノブリスを容赦なく射殺したのである。

 絵の好きな少年だったライドが、数年かけて報復を成し遂げるという最終話はさまざまな反響を呼んだ。

 そんな複雑なファンの心境を知ってか、『鉄血のオルフェンズ』のキャラクターデザイン原案を担当した伊藤悠氏は自身のXで、長井龍雪監督に聞いた話と前置きし、「最終話のライドは、まだ絵を描いています」とポストしてファンの涙を誘った。

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