■数十年前の奇跡「月精の美女」を再現した幻想的な仕掛け

 最後に紹介するのは第29話「月精」。このエピソードでは、“月の精に会いたい”という、異国の特使の無理難題が描かれる。そしてクライマックス、宴の月夜に現れたのは、人ならざる存在のような美しさを放つ「月の精」であった。

 もちろん、これも猫猫が仕掛けたトリックである。美女役として壬氏を起用した点も衝撃的だったが、注目すべきはその幻想的な「輝き」の演出だ。この仕掛けは、作中で数十年前、偶然の条件が重なって起きた現象を、猫猫が自身の知識を総動員して再現したものである。

 猫猫は、蛾の雌が放つフェロモンを利用し、意図的に無数の蛾を呼び寄せるという手法を用いた。月光を浴びて舞う蛾の羽や鱗粉が光を乱反射させることで、まるで美女が光り輝くオーラを纏っているかのような視覚効果を生み出し、見事「月の精」を誕生させたのである。

 かつて偶然が生んだ「奇跡」を科学的な視点で解析し、狙い通りに再現してみせる。この圧倒的な発想力と、それを支える積み重ねられた知識こそが、猫猫の真骨頂と言えるだろう。

 

 魔法や奇跡に頼らず、現実的な知識と鋭い観察眼だけで難題を突破していく猫猫。その「理」にかなった鮮やかな謎解きや手法は、いつ見ても最高にクールだ。

 2026年10月から始まる第3期では、果たしてどのような問題が起こり、彼女がまたどのような知恵で解決していくのだろうか。その活躍を、今はいちファンとして心待ちにしたい。

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