青山剛昌氏の『名探偵コナン』(小学館)といえば、高校生探偵・工藤新一が幼児化して、小学生・江戸川コナンとして事件を解決していく本格ミステリーだ。正体を隠しながら事件を捜査しなければならないハラハラドキドキ感も、物語の魅力の1つである。
長い連載の中では、ヒロインである幼なじみ・毛利蘭には幾度となく正体がバレそうになっている。そのたび何とかごまかしてはいるものの、「すでに正体がバレているのでは?」と思える場面もしばしば……。そこで今回は、蘭に正体がバレそうになったスリリングなエピソードをいくつか紹介する。
※本記事には作品の内容を含みます
■蘭、カマをかけまくる
最初に正体がバレそうになったのは、原作コミックス第3巻収録の「月いちプレゼント脅迫事件」だ。連載初期のこのエピソードで、コナンは推理力を発揮しすぎたために蘭に正体を疑われてしまう。
きっかけは、毛利探偵事務所を訪れた依頼者の職業を言い当てたことだった。指先にある傷を見ただけで彼が外科医だと見抜き、得意げな表情を浮かべる。その姿が、蘭には新一とそっくりに思えたのである。
実際に新一は、すべての始まりである「ジェットコースター殺人事件」で、初対面の女性の手を握り、脚の付け根の独特なあざを見ただけで体操部員だと看破している。こうした過去の記憶と重なって、蘭はコナンが新一ではないかと疑念を抱き始めたのだ。
その後も蘭が見ているにもかかわらず、コナンは鋭い推理力と調査力を披露してしまう。疑われるたびに子どもらしい振る舞いでごまかすものの、蘭は「わざとらしい」と疑いを深めるばかり。挙句の果てには、「蘭!! 急いで小川医師をここに連れて来てくれ‼」と新一の口調で指示を出す始末である。これでは正体を疑われてしまうのも無理はない。
案の定、蘭は「あの口調、あの行動、あの推理力… どれをとっても… あれは新一 ! まちがいない!!!」と確信してしまう。
こうしたコナンの活躍のおかげで、事件は無事に解決した。しかし事務所に戻った後、蘭はコナンが知るはずのない高校の先生の話題を振る。思わず反応してしまったコナンに、蘭は「やっぱりあなた新一ね‼」と詰め寄った。
万事休すかと思われたその時、電話が鳴り響く。蘭が出ると、受話器から聞こえてきたのは「よぉ蘭!ひさしぶり‼」という新一の声だった。これにより、蘭の疑いはひとまず晴れることとなる。
これこそ、蘭の疑念に気づいていたコナンの秘策。事前に阿笠博士に頼み、蝶ネクタイ型変声機を使って新一の声で電話をかけてもらったのである。
蘭は電話口の口調に“おじんくさい”と違和感を覚えたものの、一応はごまかすことには成功した。推理に夢中になると周りが見えなくなる新一の癖が抜けきらず、いまいちコナンになりきれていない、初期ならではのエピソードといえる。
■コナンが蘭に追い詰められる!?
次に紹介するのは、コミックス第14巻収録の「追い詰められた名探偵! 連続2大殺人事件」だ。このエピソードでは、タイトル通り、コナンが工藤邸の前で蘭に“追い詰められる”シーンが描かれている。
きっかけとなったのは、メガネをとったコナンの素顔をまじまじと見つめたことだった。その顔があまりに新一にそっくりだったため、蘭は疑いを深める。
さらにまたもや事件捜査の過程で、コナンが毛利小五郎に的確なヒントを与える姿も、蘭の疑いを確信へと変えていく。そして事件解決後、蘭はついに行動に出た。
事務所への帰り道、蘭は“コンビニに行く”と口実をつけ、コナンを工藤邸の前へ連れていく。真剣な顔で問いつめた後、コナンの眼鏡を投げ捨て「さあ白状してもらうわよ… 新一!!!」と叫ぶ蘭。その時、2人の間に割って入る女性の声が響いた。
「あら蘭ちゃん?」と声をかけてきたのは、新一の母・工藤有希子だった。絶体絶命の状況で現れた彼女は、コナンは「私の祖父の兄の娘のイトコの叔父の孫にあたる子」だと説明してくれる。
蘭は最初は疑っていたものの、一度は納得したような素振りを見せる。こうして母の機転によって難を逃れた……かに思われたが、実はこの時の蘭の疑念は、完全には晴れていなかった。
この場面は、次に紹介する「命がけの復活」シリーズへの重要な伏線となっている。また、有希子のとっさの嘘により、新一とコナンが親戚同士という設定が生まれた記念すべき回でもある。


