吾峠呼世晴氏による『鬼滅の刃』のメインキャラクターとして登場する竈門禰󠄀豆子。主人公・竈門炭治郎の妹である彼女は、ある日突然、鬼に家族を惨殺されたうえに自らも鬼化してしまうという数奇な運命をたどる少女だ。
作中の禰󠄀豆子は、炭治郎と行動を共にし、同胞であるはずの鬼と戦う“異質な存在”として描かれている。しかし、物語が進むにつれて明らかになる彼女の特性には、他の鬼とは一線を画するさまざまな謎があった。
そこで今回は、突然変異種の鬼ともいえる禰󠄀豆子に注目し、彼女にまつわる謎を紐解いていきたい。
※本記事には作品の核心部分の内容を含みます。
■回避不可な無惨の「呪い」を自力で外した
すべての鬼は、「鬼の始祖」である鬼舞辻無惨に血を分け与えられることで誕生する。
鬼にされた者は無惨に思考や位置を把握され、さらに無惨の名前を口にしたり、情報を漏らそうとしたりすると死に至るという強力な「呪い」に支配されている。実際、“鞠の鬼”こと朱紗丸は、珠世の血鬼術に惑わされて無惨の名を口にした瞬間、体内から巨大な腕が生え、体を破壊されていた。
しかし、この恐ろしい呪いから逃れた鬼もいる。数百年前に鬼にされた珠世は、自身の医学知識を駆使して体を改造することで呪いを外した。
禰󠄀豆子もまた、自力で無惨の支配を外しているが、なぜそれができたのか詳細は明らかになっていない。ただ、珠世によれば、鬼化した後に眠り続けた2年の期間に、禰󠄀豆子の体に何らかの変化が起きたとされる。
珠世のように長い年月をかけずとも、自力で無惨の支配を解いた禰󠄀豆子。この時点で、彼女が特別な素質を秘めていたことは疑いようのない事実だ。
■人を襲わない鬼…禰󠄀豆子は何を食べている?
鬼になった直後、帰宅した炭治郎に襲いかかった禰󠄀豆子。牙を剥きながら最愛の兄に喰らいつこうとした彼女だが、涙を流しながら必死に鬼としての本能に抗おうとしていた。
後の柱合裁判では、風柱・不死川実弥にわざと血を見せられ、激しく挑発されたこともあった。だがこの時も禰󠄀豆子は、涎を垂らしながらも必死で耐え抜き、顔を背けて誘惑を断ち切っている。本来、人間を喰らわなければ生きていけないはずの鬼でありながら、禰󠄀豆子は自らの意志で人間を襲うことはなく、「睡眠を取る」ことで体力を回復させる特異な性質を身につけた。
鬼になった後、育手の鱗滝左近次のもとで過ごした2年間、禰󠄀豆子はいわば昏睡状態のまま眠り続け、目覚めた時には見事に体力を回復させていた。無惨に襲われ重傷を負っていた当初、本来ならすぐにでも人間を捕食してエネルギーを摂取する必要があったはずだ。しかし、本能に抗った禰󠄀豆子は、眠ることでそれを解決したのである。
作中では禰󠄀豆子が食事をするシーンは描かれていない。だが、公式ファンブックによれば彼女の大好物は「金平糖」のようだ。
■優しすぎる! 暗示でどこまでも人間を守る精神
前述した鱗滝のもとでの昏睡期間中、彼によって暗示をかけられた禰󠄀豆子。「人間は皆お前の家族だ」「人間を守れ鬼は敵だ」「人を傷つける鬼を許すな」という言葉は、彼女の深層心理に深く刻み込まれた。
その結果、禰豆子は自分の命も顧みず、出会う人間を皆家族のように感じ、守り抜くようになる。この献身的な姿は「無限列車編」でも描かれており、けがを負いながらも人間のために戦う彼女の姿を見た炎柱・煉獄杏寿郎はそれまでの考えをあらため、正式な鬼殺隊の仲間と認めたほどだ。
鱗滝は「気休めにしかならんかもしれんが」と語っていたが、彼の暗示の効果は火を見るより明らかである。この暗示がなければ、禰󠄀豆子はいつか本能に負け、人間を傷つけていたかもしれない。
作中、禰󠄀豆子が鱗滝の言葉を反芻するシーンがある。彼の優しい暗示が禰󠄀豆子を支えていたことは確かだろう。
だが、暗示だけでここまで命を賭して人間のために戦えるのは、禰󠄀豆子の精神があまりにも清らかで、本来持っていた優しさが鱗滝の言葉と共鳴したからなのかもしれない。


