『豊臣兄弟!』仲野太賀が「豊臣秀長」を演じる“必然” 「名前に込められた思い」と「父の存在」… の画像
『豊臣兄弟!』ポスタービジュアル (C)NHK

 「大河ドラマに出られるように」と名付けられた男が(※1)、大河ドラマの主演を務める──これ以上に、感慨深い瞬間があるだろうか。

 2026年1月4日にスタートしたNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』。その冒頭に仲野太賀(以下、仲野)の名前が出てきたとき、心が震えたのを覚えている。

 『豊臣兄弟!』で、仲野演じる豊臣秀長は、戦国時代のカリスマ・豊臣秀吉の弟。影の立役者と言われている存在だ。ある説では、「秀長が長生きしていれば、豊臣家の天下は安泰だった」とまで語られている(※2)。

※1:『徹子の部屋』(テレビ朝日系)に仲野太賀出演時、父・中野英雄が“大河ドラマに出られるように望みを込めて名を付けた”エピソードを紹介

※2:歴史研究者の間でも、「秀長が1591年より長く生きていれば豊臣政権はより安定した可能性がある」という説が存在。

 しかし、歴史の教科書に出てくるのは、秀吉の名前ばかり。秀長の存在は、歴史マニアなら当然知っている人物かもしれないが、「学生時代、歴史はそんなに好きじゃなかった」という人にとっては、ほとんどなじみのない人物だろう。

 圧倒的な光を放つ人のそばには、必ず影が生まれる。『豊臣兄弟!』では、秀長がその“影”を担ってきたのかもしれない……と感じる瞬間が、いく度となく登場する。家族に対してどれだけ情深く接したとしても、愛されるのはなぜか兄ばかり。秀吉の発言には、自然とみんながついて行きたくなってしまう。まさに、鶴の一声ならぬ“兄の一声”だ。

■圧倒的な光を放つ父の背中を見ていたからこそ

 周囲を惹きつける兄のことを誇りに思いながら、どこかコンプレックスを感じているような深みのある表情を、仲野はまさにリアルに体現している。これは、圧倒的な光を放つ俳優である父・中野英雄のもとで育った仲野が、長い年月をかけて体得してきた感情でもあるのかもしれない。

 2024年に出演した『徹子の部屋』で、仲野は“二世俳優”と呼ばれることへの葛藤を明かしていた。自らの力でキャリアを築きたいという思いから、俳優になった当初、父の名前を公表するのも避けていたようだ。

 それでも気がつけば、仲野太賀という俳優は、“中野英雄の息子”ではなく、“仲野太賀”という1人の表現者として、たしかな存在感を放つようになった。その過程で背負ってきたであろう迷いや孤独が、秀長という人物を演じる上での説得力をもたらしているのではないだろうか。

 光のそばで生きてきた者にしか分からない感情がある。そうした繊細な心の揺れがていねいに描かれているからこそ、本作の秀長は“影の立役者”にとどまらず、戦国時代を支えた“主人公のひとり”として、わたしたちの胸に深く残るのだ。

 また、これまで歴史の主役になることが少なかった秀長が、大河ドラマという国民的コンテンツを通して、主人公として描かれる。そして、その物語をけん引するのが仲野であることに、この作品が生まれた必然性を感じずにはいられない。

  1. 1
  2. 2