なぜ炭治郎を仕留めなかった? 禰豆子を放置したのはなぜ? 『鬼滅の刃』実はいくつもあった「無惨の痛恨の失敗」の画像
『鬼滅の刃』4[DVD](アニプレックス)©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 吾峠呼世晴氏による国民的人気漫画『鬼滅の刃』。本作に登場する諸悪の根源であり、絶対的な敵として登場するのが、千年以上前に誕生した「鬼の始祖」鬼舞辻無惨である。

 自分の目的のためには、人間の命だけではなく、部下である鬼の命でさえも容赦なく踏み潰してきた無惨。しかし、物語を改めて振り返ってみると、彼のあまりに自己中心的で慎重さに欠ける振る舞いが、結果として自分自身の首を絞める事態を招いていることに気づく。

 そこで今回は、無惨が犯していた「痛恨の失敗」の数々を、作中の描写や考察を交えて紐解いていこう。

 

※本記事には作品の核心部分の内容を含みます

 

■最終選別の「藤襲山」をもっと活用していたら?

 鬼殺隊士になるためには、「最終選別」に合格する必要がある。その会場となる「藤襲山」には鬼が嫌う藤の花が1年中咲いており、その内部には隊士たちが生け捕りにした鬼たちが放たれている。候補生たちはこの過酷な山の中で7日間生き延びることで、ようやく鬼殺隊への入隊が認められるのだ。

 この藤襲山には、全国各地から育手(そだて)に鍛錬された有望な見習い隊士たちが集まってくる。後の「柱」となった逸材も、皆この試験を経てきた。

 もし無惨がより慎重な戦略家であったなら、この藤襲山を情報収集に活用できたはずである。なぜなら無惨は、自らが血を与えて作った鬼たちと視覚や感覚を共有し、居場所を把握する能力を持っているからだ。

 山に閉じ込められた鬼たちの目を通せば、今後、鬼の脅威となるであろう人間の情報を知ることができ、より良い策を講じることができたかもしれない。極論を言うと、無惨自身が藤襲山を強襲すれば、次世代の鬼殺隊の戦力を根絶やしにすることも可能だっただろう。

 しかし、自分以外の存在を見下す彼の傲慢な性格を考えれば、地道に情報を収集することや、そもそも人間に捕まるような弱い鬼自体に興味がなかった可能性も考えられる。とはいえ、結果的にこれが、のちに自身の首を絞める結果となるのだが。

■浅草で接触した炭治郎をなぜ仕留めなかったのか?

 何百年もの間、鬼殺隊から逃げ続けていた無惨。鬼殺隊の当主である産屋敷一族ですら掴めなかった無惨の尻尾を物語の序盤で掴んだのが、主人公・竈門炭治郎(かまど たんじろう)だ。

 炭治郎は脅威的な嗅覚を持っていたため、家族を惨殺された際に生家に残っていたわずかな無惨の匂いを辿り、浅草の雑踏の中、彼を見つけ出す。

 炭治郎に呼び止められた時、怪訝な表情を見せた無惨。人間の青年・月彦として妻子を持ち、社会に溶け込み生活していた無惨にとって、自分の正体を突き止めた炭治郎の存在はまさに青天の霹靂だった。

 その後、無惨は即座に炭治郎を始末するよう部下の鬼に命じていたが、ここで疑問が湧く。なぜ無惨は、自身で手を下すことなくその場を立ち去ったのだろうか。

 彼ほどの圧倒的な力があれば、炭治郎もろとも周囲の人間を蹴散らすことは容易だったはずだ。そもそも他人に興味のない無惨なのだから、別の場所でまた新しい根城を探せばいいだけのこと。

 その後、数々の戦いを経て柱にも及ぶ実力を身に着けていく炭治郎を、まだ若芽のうちに摘み取ってしまえば、戦況は大きく変わっていただろう。

 無惨といえど、いきなり正体を見破られて気が動転していたのだろうか。炭治郎の元から逃げるように立ち去ったあと、ほかの人間の他愛もない軽口に激昂して派手な行動を取っていたことからも、冷静さを欠いていたのは明らかだった。

 いずれにせよ、無惨にとって一生の不覚となったといえる出来事である。

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