漫画やアニメではトップレベルの戦闘力を持ちながら、精神面の弱さゆえに本来の実力を発揮できないキャラクターも多い。ふだんから弱気丸出しな者もいれば、挫折や過度なストレスを経験してメンタルブレイクを引き起こす者もいる。
自信に満ちあふれたときやスイッチが入ったときの圧倒的な強さと、ヘタレ状態の弱々しいときのギャップもある種の魅力であり、キャラクターに人間的な味を加えるエッセンスともいえるだろう。
そこで今回はたしかな実力を持ちながら、精神面の弱さを露呈したキャラクターたちを、そのエピソードと併せて掘り下げていきたい。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■つねにネガティブ思考のヘタレ剣士
吾峠呼世晴氏による『鬼滅の刃』は、2016年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載開始。アニメ作品や映画作品は圧倒的な人気を集め、社会現象を巻き起こしたほどだ。
主人公である竈門炭治郎の鬼殺隊での同期、我妻善逸は雷の呼吸の使い手で居合の達人。鬼を察知したり、感情を読み取ったりできる鋭い聴覚を持ち、極限まで鍛えあげた「壱ノ型・霹靂一閃」は雷光の如き速さで鬼を斬り倒す。
しかし、そんな高いポテンシャルを秘めながら、極度の怖がりとマイナス思考が災いして、通常時は本来持つ実力を発揮できない問題児でもあった。人喰い鬼を前にしながら、恥も外聞もなく泣き叫んで逃げ出すことも……。
そのヘタレぶりはすさまじく、鼓の屋敷では意識を失った状態で善逸自身が鬼を討伐しながら、民間人の幼い少年が倒したと思い込んで「正一君に俺を守ってもらうんだ」と泣きつく始末。また鬼殺隊の最終選別に行くのも嫌がり、師匠にビンタされまくって渋々参加した経緯もある。
とくに物語序盤は、緊張や恐怖が極限まで高まると気を失い、半覚醒状態になってようやく実力を出せるという特異なメンタルの持ち主だった。
そんな善逸は無限城編ではさまざまな事情が重なり、気を失うことなく持ち前の実力を発揮していたが、本来はメンタルの弱さゆえに本番に弱いタイプなのは間違いなさそうだ。
■視ただけで心が折れたチート念能力者
『HUNTER×HUNTER』は、1998年から冨樫義博氏が『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載している人気漫画だ。同作に登場するノヴは、ハンター協会の会長であるアイザック=ネテロが、危険生物キメラアントの討伐隊に同行させるほどの実力者である。
黒スーツをクールに着こなす知的な人物で、強力な念能力を持つ放出系能力者だ。彼が扱う「4次元マンション(ハイドアンドシーク)」は、自身が創り出した念空間のマンションの入口と任意の場所の空間をつなげて、人や物を転送させられる能力。
そして「窓を開く者(スクリーム)」は、両手の間に生み出した念空間への入り口である「窓」を通して、敵の体の一部を転送させるという非常に強力な技だ。実際にノヴはこれらの能力を駆使し、キメラアントの兵士や、トンボのような姿をした兵隊長フラッタを難なく倒している。
しかしキメラアントの巣食う王宮に忍び込んだ際、あまりにも禍々しいシャウアプフらの凶悪なオーラを目の当たりにして、あっさり心が折れてしまう。
その場を離れたあとも震えが止まらず、「視ただけで精神が折れてしまった……」と自覚したノヴ。その後、仲間たちを王宮に送り込むサポート役に徹したものの、あまりの恐怖に顔はやつれ、突然白髪になって髪が抜け落ちるという悲惨な状態に陥ってしまった。
絶の状態でキメラアントの王直属護衛軍のオーラを視てしまうという不運があったとはいえ、ゴンやキルアらはもっと至近距離でそれを体験している。それまでの自信満々な態度と上から目線の発言が印象的だっただけに、ノヴにメンタルが弱いという印象がついてしまったのはやむを得ないだろう。


