■伝説の11人抜きを置き土産に『シュート!』久保嘉晴
大島司さんが描く青春サッカー漫画『シュート!』の久保嘉晴も、その死を惜しまれた名プレイヤーだ。創部1年目の掛川高校サッカー部を率いて強豪藤田東高校を破った天才サッカー選手であり、「ワールドカップで活躍見たいよなぁ」と言われるほどの圧倒的な存在だった。
久保の凄さを語るならば、やはりインターハイ予選準決勝で見せた「11人抜き」は外せない。
掛川北高校の広瀬清隆が操るナックルシュートに掛川サッカー部が苦戦する中、久保は「1点とる!」と宣言し、自軍ゴール前からドリブルし、敵ゴールをめざす。迫る北高のディフェンスを多彩なテクニックで抜き続け、最後は11人目のキーパーをかわしてゴール! たった1人で11人を突破する「11人抜き」を達成した。偉業を成し遂げた久保の背中に刻まれた「10番」が大きく描かれた、第59話ラストシーンの美しさは印象深い。
だがその直後、以前から白血病を患っていた久保はフィールドに倒れ、運び込まれた医務室で急死してしまう。主人公・田仲俊彦を筆頭に、多くの人間の憧れであり目標でもあった久保の死の影響は大きく、掛川サッカー部は続く決勝戦で大敗を喫する。あまりの展開に茫然とした読者もいるのではないだろうか。
だが、久保の死は悲劇だけでは終わらなかった。偉大な天才の意志を継いだ掛川サッカー部は、後に全国制覇の偉業を成し遂げる。掛川サッカー部のドラマは1人の天才の死をきっかけに、幕を開けたのだ。
今回紹介してきた逸材たちの死は、物語の大きな転換点であり、未来につながる大きな出来事でもあった。
『MAJOR』で茂治の死が息子・吾郎とギブソンのつながりとなり、のちに吾郎がメジャーの大舞台に立つきっかけとなったように、スターの死は残された者に大きな影響を与える。彼らが去ったからこそ、物語に彩りが生まれたのは事実だろう。
しかし、いちファンとして彼らのその先の活躍が見たかったのも本音である。「もし彼が生きていたら……」と惜しみたくなる時点で、逸材たちの輝きは本物だったといえよう。


