バブル期には多くのドラマが放送されたが、『スクール☆ウォーズ』(TBS系)に代表される“スポ根”ドラマが一世を風靡した。そのブームの中、美しいプロポーションと可愛らしい顔立ちでお茶の間の視聴者を魅了したのが、主演・宮沢りえさんのドラマ『青春オーロラ・スピン スワンの涙』(フジテレビ系)である。
1989年に放送された本作は、シンクロナイズドスイミング(現:アーティスティックスイミング)をテーマにした青春ドラマだ。バレエの道を断念した少女が、一流のシンクロナイズドスイマーを目指すという、当時としては異色の物語であった。
今回は、『スワンの涙』がどのような作品だったかを振り返ってみよう。
※本記事には作品の内容を含みます
■バレエの挫折からシンクロの世界へ…異色のスポ根物語
『スワンの涙』は、宮沢さん演じる主人公・葉月ミカが、舞台上でバレエを踊るシーンから始まる。しかし、ミカは演技の最中で足を痛めてしまい、バレリーナとしての道を断たれてしまう。
失意のどん底にいたミカだが、やがて水中を舞台にした競技、シンクロナイズドスイミングと運命的な出会いを果たす。ミカはバレエで培った表現力を武器に、厳しい練習やライバルとの葛藤を乗り越え、一流のスイマーへと成長していくのだった。
一見すると、まさに王道のスポ根ストーリーだが、物語には複雑にさまざまな要素が織り交ぜられている。実はミカは水恐怖症で、練習初日にはプールに入ることすらできない。恐怖症の原因は幼い頃の出来事がきっかけなのだが、それをどう克服していくかも序盤の見どころとなっていた。
また、当時のシンクロ界は女性だけの世界であり、ミカは女性ならではの激しいライバル争いや、いじめに苦しめられる。さらに話が進むとミカの出生の秘密が明かされるなど、バブル期のドラマによく見られたドロドロの愛憎劇の要素も盛り込まれていた。
本作は、多くの美しい若手女優が出演する華やかなドラマでありながら、物語の主軸は恋愛よりもシンクロを中心としたライバル同士の熱き戦いに置かれている。過度なお色気や過激な暴力シーンはないため、放送当時は家族揃って安心して視聴できた記憶がある。
■宮沢りえさんの原点ともいえる作品
主演を務めた宮沢さんは、当時16歳。「三井のリハウス」のCMで演じた白鳥麗子役で社会現象を巻き起こした直後であり、まさに“国民的美少女”として人気が爆発していた時期だ。
本作は彼女の連ドラ初主演作であり、今見返してみると、演技にういういしさを感じられる部分も見られるが、それもまた魅力的だ。
本作で宮沢さんはシンクロ用の水着をまとい、健康的に引き締まった美しい体を披露している。当時の彼女は、内側から溢れ出すようなはつらつさが際立っていた。演技中に見せる長い手足のしなやかな動きは、ドラマのキャッチコピーにある通り、まさに「水の妖精」そのものであった。
作中ではシンクロの技だけではなく、本格的な泳ぎのシーンも多数あることから、撮影にあたってハードな練習を重ねていたことがうかがえる。過酷な水中撮影にも体当たりで挑む宮沢さんのひたむきな姿勢は、困難に立ち向かう主人公・ミカの姿と重なり、視聴者の「応援したい」という気持ちを強くさせただろう。


