トキへの本音、ジャギへの諦め、ケンシロウへの焦り…『北斗の拳』個性的な弟たちに悩まされた「長兄・ラオウの管理術」の画像
ゼノンコミックスDX『北斗の拳 究極版』第10巻(徳間書店)(C)武論尊・原哲夫

 原作・武論尊氏、作画・原哲夫氏による『北斗の拳』は、1983年から1988年にかけて『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された不朽の名作だ。連載開始から40年以上の時を経て、いよいよ今年、新作アニメ『北斗の拳-FIST OF THE NORTH STAR-』の放送が予定されており、大きな話題を呼んでいる。

 本作は核戦争後の荒廃した世界を舞台に、一子相伝の暗殺拳「北斗神拳」の伝承者候補である兄弟たちの宿命的な戦いを描いた作品だ。主人公は四兄弟の末弟・ケンシロウだが、長兄・ラオウの存在感は、作中において圧倒的である。

 しかし、世紀末覇者「拳王」として君臨したラオウも、実は個性豊かな3人の弟たちの扱いに、長兄として頭を悩ませていたのではないだろうか。そこで、強権的な支配の裏に隠された、ラオウなりの「弟管理術」という視点で各シーンを振り返ってみたい。

 

※本記事には作品の内容を含みます

 

■ラオウがトキをあえて「幽閉」にとどめた本音とは?

 北斗四兄弟のなかで、ラオウが最もその実力を認めていたのが次男・トキである。ラオウはかつて、トキが病に侵されていなければ「オレに勝てたかもしれぬ」と涙ながらに吐露しており、その才能には一目置いていた。しかし、覇道を目指すラオウにとって民衆から慕われるトキの存在は、自身の統治の妨げになりかねなかった。

 そこでラオウがトキにとった対応手段は、自分が率いる拳王軍の支配下にある伝説の監獄・カサンドラへの幽閉だった。トキの命を奪わず幽閉にとどめたのは、その実力への敬意や執着と、弟への屈折した愛情の表れといえるだろう。ラオウにとってトキは、実力があるがゆえに殺せず、かといって自由にもさせられない、そんな複雑な存在だったのである。

 しかし、トキはケンシロウによってカサンドラから解放される。その後、トキはラオウとの直接対決に臨むが、病に侵された体でラオウに勝つことはできなかった。地に伏したトキに対し、ラオウは「幼き日のままのお前の心が このオレの枯れた涙を呼び戻した」と伝え、涙を流している。

 ラオウにとってトキの存在は、弟であると同時に、唯一無二のライバルや友人のような大切な存在だったのであろう。

■あいつはもういい!? ジャギの悪行に対するラオウの諦め

 三男・ジャギに対するラオウの対応は、他の兄弟とは明らかに異なるものだった。

 ジャギはケンシロウへの歪んだ復讐心から数々の悪行を重ねるが、ラオウがジャギを直接的に罰したり、軍団に引き入れたりする様子は見られなかった。これは「管理」というよりは、もはや「放任」に近いだろう。

 北斗神拳伝承者にケンシロウが選ばれた際、ジャギは「兄者たちはなぜ なにもいわん!!」とラオウとトキにさんざん喚くが、2人はそれに対し返事すらしていない。納得のいかないジャギは自らケンシロウを銃で亡き者にしようとするも、一瞬で返り討ちに遭い、顔にひどい傷を負うことになる。

 ラオウは兄弟の中でも最弱のジャギに関して、もはや干渉する価値もないと判断していたのだろう。格下のジャギが何をしようと、自身の覇道には何ら影響はないのだ。同じ北斗の門下生としてジャギの悪行を放置していたのは、長兄として「諦め」の境地だったといえそうだ。その距離感は、あたかも「あいつはもういい」と突き放しているかのようである。

 結局ラオウは、ジャギがケンシロウの手で倒されるまで、静観を貫いたのであった。

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