『家政婦は見た!』は1983年から2008年にかけての四半世紀にわたり、『土曜ワイド劇場』で放送された人気ドラマシリーズである。本作は「大沢家政婦紹介所」から派遣される、市原悦子さん演じるベテラン家政婦・石崎秋子が、派遣先の上流家庭で“見てはいけない秘密”を覗き見てしまう物語だ。
市原さんが演じた秋子は、今もなお伝説的なキャラクターとして語り継がれている。ここでは、単なるサスペンスドラマに留まらない本作の魅力について振り返ってみよう。
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■「あらいやだ…」のぞき見と盗み聞きが暴く上流階級の裏側
『土曜ワイド劇場』の金字塔として25年もの長きにわたり放送された『家政婦は見た!』シリーズ。本作の最大の醍醐味は、やはり市原さん演じる主人公・秋子の個性的なキャラクターにあるだろう。
秋子は家政婦としての仕事は完璧でありながら、旺盛な好奇心と野次馬根性を抑えられない一面を持つ。“家族ではないが家の隅々まで入り込める”という家政婦ならでは立場を利用し、派遣先の豪邸の奥へ奥へと踏み込んでいくのである。
市原さんの柔らかくどこかあどけない声で語られる独り言や、同僚に聞かせる報告シーンは、本作の見どころの1つである。また、豪邸の廊下を猫のように音もなく移動し、観葉植物の陰から家人の醜態を凝視する姿もコミカルで印象的だ。しかし、その視点は極めて冷静で、見たこと聞いたことのすべてを記憶してしまうため、秘密を覗かれた側にとってはたまったものではないだろう。
秋子が覗き見るのはエリートたちの知られざる裏の顔であり、視聴者は“金持ちはこんな秘密を抱えているのか”と、好奇心を掻き立てられた。秋子お決まりのセリフである「あらいやだ…」のつぶやきとともに凝視する姿に、視聴者はまるで共犯者になったかのようなスリルを味わえたのである。
■秋子登場で一家離散!? 泥沼のスキャンダルを暴く異色サスペンスの快感
『家政婦は見た!』はサスペンスドラマ枠での放送でありながら、基本的に殺人事件は起こらない。これは当時の2時間ドラマでは珍しかった。その代わりに描かれるのは、泥沼の愛憎劇や相続争い、脱税、隠し子騒動といった上流階級ならではのスキャンダルである。
秋子の派遣先は、政治家や大病院の院長、伝統芸能の家元といった、いわゆる社会的ステータスが高いとされる家族だ。最初は家政婦を穏やかに迎え入れる彼らだが、日を追うごとに複雑な人間模様や愛欲に渦巻く裏の世界が、秋子の観察眼によって暴かれていく。
そして、秋子の存在がきっかけとなり、それまで隠蔽されていた秘密が世間に晒され、社会的地位や名誉が失墜してしまうのがお決まりの展開だ。幸せに見えていた家庭が崩壊し、一家離散に追い込まれるケースも少なくない。
しかし、秋子はそんな状況を助けるわけでもなく、「もうこれでおいとまいたします」などと言って、あっさり去っていくのだ。
多くの場合、家庭を崩壊させた原因は秋子の言動にもあるのだが、秋子は「さあ、次!」といわんばかりに全く気にしない。その結末は、サスペンスドラマというより、むしろ時代劇『水戸黄門』のような勧善懲悪の一件落着感を視聴者にもたらし、不思議と爽快な気分にさせてくれた。


