物語が進むにつれて、パワーインフレが加速していった『ドラゴンボール』(作:鳥山明さん)。サイヤ人の襲来、宇宙の帝王フリーザの出現、さらには人造人間や魔人ブウの脅威……。次々と現れる規格外の敵を前に、かつて孫悟空とともに戦ってきた仲間たちが戦闘の第一線から次第に退いていく姿に、寂しさを覚えたファンも少なくないだろう。
しかし、アニメオリジナル(アニオリ)回や劇場版に目を向けてみると、そんな彼らが時として驚異的な強さで「無双」を見せる場面が存在する。
今回は、原作での力関係をくつがえすような、ファンを熱狂させた「まさかの無双シーン」を振り返りたい。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■界王星で驚くべき事態が…!? ヤムチャたちがギニュー特戦隊を圧倒
アニメ『ドラゴンボールZ』の第92話から第95話、ナメック星での悟空とフリーザの死闘の裏で、界王星では驚くべき事態が起きていた。
界王様のもとで修業に励むヤムチャ、天津飯、チャオズの前に、ナメック星で命を落としたギニュー特戦隊の4人、リクーム、バータ、ジース、グルドが現れる。
彼らは界王星を乗っ取ろうと暴挙に出るが、ここで原作ではあり得ないドリームマッチが実現したのだ。
わずか数時間前には、孫悟飯やクリリン、ベジータをも絶望の淵に追い込んだギニュー特戦隊。当初は劣勢を強いられるZ戦士たちだが、不甲斐ない教え子を見た界王様の「攻めるんじゃ!」という檄をきっかけに反撃を開始。さらに「悟空がフリーザを倒した(実際には誤報であったが)」という知らせに動揺する特戦隊を尻目に、勢いづいたZ戦士の猛攻が始まったのである。
ヤムチャがリクームを圧倒し、チャオズはグルドを翻弄。天津飯は「四身の拳」で分身し、バータとジースを2人同時に相手にするという無双ぶりを披露する。最後はZ戦士たちがフリーザ軍の精鋭を1人残らず界王星から「血の池地獄」へと叩き落とし、決着がついた。
「修行の相手が、あイテぇ(あいて)って逃げてった」と、界王様も得意のダジャレで大満足。そう、実はこの騒動、Z戦士たちの成長を試すために、界王様が閻魔大王に依頼して特別に呼び寄せた「修行の相手」だったのだ。
原作のパワーバランスを考えるとちょっと厳しすぎる相手だった気もするが、Z戦士たちの成長と底力を見せつけた、アニオリならではの熱い名シーンといえるだろう。
■「武天老師」の異名は伊達じゃない! 数千の兵を前に見せた亀仙人の意地
次は、2015年公開の劇場版『ドラゴンボールZ 復活の「F」』での亀仙人の活躍だ。
ドラゴンボールにより復活を遂げたフリーザが、数千の軍勢を率いて地球へ侵攻。しかし、悟空とベジータは修行中のため不在であった。これを迎え撃つべく集結したのは、ピッコロ、天津飯、クリリン、銀河パトロールのジャコ、そして修業を怠っていたジャージ姿の悟飯と、戦力的にどこか心もとない顔ぶれであった。
この地球の窮地に、意外な助っ人として駆けつけたのが、かつて「武天老師」と崇められた亀仙人だ。集結した戦士たちを前に「一人当たり170人ほどがノルマじゃ。悟空とベジータが来るまで踏ん張れ!」と皆を鼓舞し、自らも前線へと飛び出していく。長らく戦闘から遠ざかっていた印象の老師だが、その武才はまったく衰えていなかった。
潜在能力を解放する「MAXパワー」によって筋肉隆々の巨体へと変貌した姿は、かつて天下一武道会で「ジャッキー・チュン」として月を破壊してみせた、あの頃の勇姿そのもの。代名詞である「かめはめ波」を放ち、押し寄せるフリーザ軍を次々となぎ倒していくその無双ぶりには、往年のファンである筆者も思わず胸が熱くなった。
かつて世界最強と謳われた男が、宇宙規模の最新の戦場でも引けを取らないことを証明したこの活躍は、のちの『ドラゴンボール超』で描かれた「宇宙サバイバル編」の「力の大会」における第7宇宙代表への選出につながり、亀仙人が再び物語の最前線で輝く大きなきっかけとなったのである。


