■熱意がほとばしる…千草の鬼気迫る指導と圧倒的演技

 千草といえば、そのビジュアルが放つ強烈なインパクトを忘れてはならない。感情が高ぶった際や何かを見抜いたときに見せる鋭い眼光は、まさに彼女の代名詞だ。

 特に、マヤの才能を初めて見抜いた際の衝撃的な表情や、「オーホホホホホ」という高笑いとともに叫んだ「おそろしい子!」のセリフは『ガラスの仮面』を象徴するあまりにも有名な名シーンである。

 また、マヤを鍛え上げるための特訓シーンは、時に演劇指導の域を超え、ある意味ホラーともいえる壮絶さを見せる。

 例えば、舞台「たけくらべ」での特訓シーンで、千草は泣き言をいうマヤを極寒の物置小屋に閉じ込める。そして自らその小屋の入口に立ち、雪が降る中、5日間にもおよぶドア越しの稽古を続けるのだ。そのときの鬼気迫る千草の表情は凄絶そのものであり、自分の命を削ってまでもマヤに演技の真髄を伝えようとする覚悟が伝わってくる。

 また「紅天女」の役作りのために訪れた「紅の谷」で、千草が吊り橋を渡るシーンがある。彼女は両足に鈴を装着して揺れる橋を渡りきるのだが、驚くべきことにその道中で鈴の音は一度も響かなかった。

 その後、自ら紅天女の仮面を被り、マヤたちの前で実演してみせた千草。暗闇から突然姿を現すなど常人離れした演技を何度も披露し、その圧倒的な怪演に誰もが息を呑んだ。

 『ガラスの仮面』の主人公はもちろんマヤではあるものの、千草が見せてきたこうした数々の存在感もまた、多くの読者を惹きつけてやまない理由だろう。

 

 主人公が夢を追いかける物語には、その成長に欠かせない師匠キャラクターがよく登場する。中でも月影千草は、少女漫画界においてその代表的な存在といえるだろう。

 連載開始から50周年の節目を迎えた『ガラスの仮面』。「最も早く続きが読みたい少女漫画」の代表格ともいえる本作の新たなる展開と、千草の最後の教えが描かれる日を心待ちにしたいところである。

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