■劇場版『世紀末の魔術師』:狙いが外れていたら即死だった一瞬
劇場版第3作『名探偵コナン 世紀末の魔術師』で描かれたのは、ロマノフ王朝の秘宝「インペリアル・イースター・エッグ」を巡る、怪盗キッドと連続殺人犯スコーピオンが絡む連続殺人事件。スコーピオンの正体・浦思青蘭との対峙で訪れたのは、文字通りの生死の境目だった。
物語終盤、コナンは青蘭と直接向き合い、放たれる「最後の銃弾」がどこを狙ってくるのか、瞬時の判断を迫られる。右目ばかりを狙撃するという彼女の犯行パターンから、コナンは「次に狙われるのは“目”だ」と読み切った。そして彼は、強化ガラス製のメガネで銃弾を受け止めるという、極めて危険な選択に出たのである。
読みは的中し、命は助かった。だが、この行動は極めて危険な賭けでもあった。もし、狙撃ポイントが頭、喉、心臓だったなら、そして銃弾が少しでも逸れていたら。物語はその瞬間に終わっていた可能性すらあるのだ。
論理と観察力に裏打ちされた判断ではあった。しかし結果的に見れば、「当たれば生存、外れれば即死」という、あまりにも運任せな勝負だったと言えるだろう。
コナンの胆力が際立つ名シーンであると同時に、運に救われた瞬間としてもインパクトの大きい場面だ。
『名探偵コナン』の事件は、緻密な推理と論理によって解き明かされてきた。だがその一方で、すべてが計算通りだったわけではないのだ。コナンも、そして彼と行動を共にしてきた登場人物たちも、偶然に助けられ、選択に救われ、紙一重で命を拾った瞬間を何度も経験している。
ほんの少し状況が違えば、ほんの一手を誤っていれば、物語はまったく別の結末を迎えていたかもしれない。だからこそ、『名探偵コナン』の事件は一瞬たりとも気が抜けず、推理の先にある「人の選択」や「運命の分岐」が、物語に深みを与えてきたのだろう。


