■伝統を背負いながら「一期一会」を生きる、西門総二郎
最後はF4のメンバーの1人である、西門総二郎を紹介したい。
茶道の家元という厳格な家に生まれた彼は、医者として独立した兄に代わり、跡継ぎとして育てられたという背景を持つ。
座右の銘であり、口癖でもある「一期一会」は茶道の精神に由来する言葉だが、作中ではもっぱら「本気の恋はしない」という彼自身のスタンスを正当化するために使われてきた。
しかし大人になって物語をあらためて読み解くと、彼は単なるプレイボーイではなく、家元の跡継ぎとしての孤独と責任感を背負っていることがうかがえる。
総二郎が本気の恋を避けるようになった背景には、幼なじみであり、中学時代の初恋の相手、日向更(ひなた・さら)との苦い経験がある。
2人は互いに想い合っていたものの、総二郎が重要な約束を破ってしまったことでその恋は終わってしまった。この時の喪失感が、その後の彼の女性に対する姿勢につながっているのである。
総二郎は要領が良く、仲間内ではムードメーカーとしても重要な存在だ。しかし、その内面には名門の跡取りとしての重圧や、過去の恋愛における挫折を抱えており、とても人間らしい一面を持っている。
時に言いたいことをズバズバと口にするといった欠点はあるものの、仲間想いでここぞという時に頼りになるバランス感覚は、パートナーとして非常に魅力的だ。
『花より男子』が30年以上の時を経てもなお愛され続ける理由は、主役キャラクターたちの華やかさだけでなく、今回挙げた3人のように、魅力あふれる脇役たちの存在も大きい。今、作品を読み返すと、連載当時には気づけなかった彼らの真の強さや優しさを発見することができるだろう。
もし自分が『花より男子』の世界の住人だとしたら、どのような男性キャラクターに惹かれるのか。そんな想像をしながら作品を今一度読み返してみるのも面白い。


