■「オレは今なんだよ!!」選手生命を超え、桜木が“今”にかけた真の栄光

 最後は、本作最大のクライマックスである湘北対全国王者・山王工業高校戦だ。この試合における桜木の大怪我と、自らのバスケット人生をかけたあの決断を振り返りたい。

 山王戦の終盤、残り2分24秒、点差は8点(66-74)。「まだいける!」と必死に食らいつく湘北に対し、勝負所を熟知する山王主将・深津一成が牙を剥く。深津は宮城の一瞬の隙を突き、ボールをカット。宮城の膝に当たったボールが非情にもコート外へとこぼれそうになった瞬間、迷うことなく身を投げ出したのが桜木だった。

 勢いそのままにコートサイドのテーブル席に背中を強打した桜木。その後、しばらくプレーを続けるものの、背中の状態は想像以上に深刻だった。

 一度ベンチに下がった桜木は激痛に耐えきれず、コートサイドでうずくまってしまう。再出場を検討していた安西先生も、その様子を見て交代を断念。しかし、そんな恩師の決心をくつがえしたのは、桜木が振り絞った魂の叫びだった。

 「オヤジの栄光時代はいつだよ… 全日本のときか?」「オレは…… オレは今なんだよ!!」

 この言葉は、決して単なる強がりではない。バスケを始めた当初はただの不良だった少年が、がむしゃらにボールを追い続ける中で真の「バスケットマン」へと成長し、その果てに初めて見つけた「すべてかけてもいい」という本心だったのである。

 再出場を果たした桜木は、激痛に耐えながら山王の度肝を抜くプレイを連発する。そして試合終了間際、流川からのパスを受け、合宿で2万本練習した「左手はそえるだけ」という基本に忠実なジャンプシュートを沈め、勝負を決めた。

 この代償として桜木は長期のリハビリ生活を送ることになるが、それと引き換えに彼が得たものは、自らの決断で掴み取った何物にも代えがたい栄光だったのである。

 

 悲願、野心、そして純粋な情熱。抱く思いは三者三様だが、怪我という絶望的な状況に直面してもなお「前」を見据え続けた彼らの瞳は、何よりも強く、そして眩しかった。

 連載終了から長い月日が流れた今でも、彼らがコートに刻んだ輝きは決して色褪せない。逆境の中でこそ放たれた数々の「魂のプレー」は、時代を超えて我々読者の心に深く、熱く刻み込まれているのである。

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