『SLAM DUNK』絶望的な“怪我”から奇跡を呼んだ「3人のプレイヤー」赤木剛憲に流川楓、桜木花道も…の画像
『SLAM DUNK』Blu-ray Collection VOL.3(東映ビデオ) (C)井上雄彦・アイティープランニング・東映アニメーション

 コートを駆けるバッシュの音、空中で激しくぶつかり合う肉体。華麗なイメージとは裏腹に、バスケットボールは常に「怪我」のリスクがつきまとう過酷なコンタクトスポーツである。

 不朽の名作『SLAM DUNKスラムダンク)』においても、作者・井上雄彦氏は怪我という残酷な現実に目を背けることなく、そのリアルを克明に描き出していた。

 今回は、怪我という逆境を跳ね除け、泥臭くも気高く戦い抜いた3人のプレイヤーにスポットを当てたい。絶望的な状況だからこそ鮮烈に輝いた彼らの「魂のプレイ」を、あらためて振り返ってみよう。

 

※本記事には作品の内容を含みます

 

■「いいからテーピングだ!!」悲願の舞台へ…主将・赤木が見せた不屈の執念

 「ゴリ」の愛称で知られる湘北高校主将・赤木剛憲。彼が悲願の全国大会出場をかけた神奈川県予選リーグ、王者・海南大附属高校戦で見せた姿は、まさに主将の矜持そのものだった。

 前半残り5分、リバウンドの着地で相手選手の足に乗ってしまい、左足首を激しく捻挫。自力で歩くことすら困難な激痛に襲われ、足首は見る間に大きく腫れあがっていく。そんな絶望的な状況下、控室でマネージャーの彩子に言い放った言葉は、今なお読者の胸を熱くさせる。

 「いいからテーピングだ!!」

 この叫びは、彼がどれほどの思いでこの試合に臨んでいるかを痛いほど物語っている。

 湘北入学時から恵まれた体格と、「全国制覇」という高い志でバスケへの情熱を持ち続けてきた赤木。副主将・木暮公延という唯一無二の理解者はいたものの、それをコートでともに体現できる仲間に恵まれない不遇の時期は長かった。

 周囲との意識の差に悩み、どれだけ努力しても勝利に結びつかない孤独な日々。それだけに、王者・海南と対等に渡り合えるこの時間は、木暮とともに3年間耐え忍び、積み上げてきた努力がようやく報われようとしている最高の瞬間だったのである。

 後半、足を引きずりながらもコートに戻った赤木は、痛みを微塵も感じさせない驚異のプレーを連発。ゴール下で圧倒的な存在感を放ち、海南を土俵際まで追い詰める原動力となる。その姿は、帝王・牧紳一が「オレが敵のプレイヤーを尊敬するのは初めてだぜ…!!」と評するほどにたくましく、そして鬼気迫るものがあった。

 怪我というアクシデント以上に、彼の「勝負にかける執念」が、桜木花道をはじめとする湘北メンバーの士気を極限まで高めたことは言うまでもない。ボロボロになりながらもゴール下を死守する赤木の背中は、真のリーダーの在り方を我々読者にも示してくれたのである。

■「一歩も引く気はねーぜ」視界を奪われても揺るがぬ、“日本一”への流川の矜持

 湘北のインターハイ初戦の相手は、大阪代表・豊玉高校だった。この試合で流川楓を襲ったのは、「エースキラー」の異名を持つ南烈による、故意ともとれる肘打ちだった。左目を強打し、まぶたが大きく腫れあがったことで、流川は片目の視界を失うという絶望的な状況に陥る。

 コートへ戻った流川をまず苦しめたのは、距離感の喪失だった。宮城リョータからの絶好のパスをキャッチできずに弾いてしまうシーンは、バスケットにおいて片目の視力を奪われることが、いかに致命的なハンディキャップであるかを物語っていた。

 しかし、流川の心は折れるどころか、加害者である南に対し、「日本一の選手」とはどういうものかと持論を説き、こう宣言したのである。

 「オレはそれ(日本一の選手)になる」「一歩も引く気はねーぜ」

 この言葉通り、流川は一歩も引くことなくアグレッシブに攻め続けた。そこで彼が見せたのは、何万回も繰り返して身に着けたシュートフォーム、すなわち「身体の記憶」である。そして片目が塞がったまま臨んだフリースローでは、あえて両目を閉じ、感覚だけを頼りに見事にリングを射抜いてみせた。

 この驚異的な集中力と執念は、南の精神をも激しく揺さぶることになる。勝利のために手段を選ばなかった南に対し、どのような状況でも純粋に「高み」を追い求める流川の姿は、あまりに眩しく映った。

 不自由な片目の先で流川が見据えていたのは、目前のゴールだけではない。自身が到達すべき「日本一の選手」という、揺るぎない孤高の頂だったのである。

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