■素顔を隠す理由は? 刀鍛冶たちが身に着ける「ひょっとこ面」
「刀鍛冶の里」といえば、刀鍛冶たちが身に着けている「ひょっとこ面」が印象的だ。彼らは外出時だけでなく、日常生活においてもこの面を外さず、お風呂上がりですら着用している。
彼らがひょっとこ面を身に着ける理由は、作中では明確には語られていないが、おそらくその目的は、個人の特定を避けるためだと推察される。
とくに、柱の刀を担当するような高い技術を持つ者が鬼に狙われてしまえば、鬼殺隊にとって影響は大きくなってしまう。そういった事態を防ぐため、皆がひょっとこ面を着用し、個人の識別を難しくしているのではないだろうか。
とはいえ、鋼鐵塚蛍のように面を着けていたとしても服装や言動で特定できてしまう個性的なキャラクターもいるため、その効果は人によってまちまちだと思うが……。
また、ひょっとこ面といえば、口をすぼめて火を吹く「火男」が由来とされる。火が必要不可欠な刀鍛冶にとって、火事を防ぐ厄除けやお守りとしての意味合いも含まれているのかもしれない。
■里の住民は男性ばかり? 女性が登場しない理由
「刀鍛冶の里」では、女性の住民が登場しないことを不思議に思った読者もいるかもしれない。実際に鬼の襲撃を受けた場面でも、被害に遭っているのは男性の刀鍛冶ばかりだった。
しかし、里に女性が全くいないというわけではないようだ。嘴平伊之助の日輪刀を担当している刀鍛冶・鉄穴森鋼蔵には妻がいることが、コミックスのおまけページで明かされている。
鉄穴森は5年前に出会った2歳年下の「鉛(えん)」という女性に一目惚れし、結婚している。そして結婚後、もともと丸顔だった鉛の顔が、夫・鉄穴森の素顔に似て面長に変化したというユニークなエピソードも紹介されていた。
作中で女性の刀鍛冶が登場しないのは、物語の舞台である大正時代という時代背景が関係している可能性があるだろう。当時、刀鍛冶は男性の仕事という認識が一般的であり、危険を伴う鍛冶場に女性が立ち入ることは少なかった。
こうした理由から、作中では女性の姿が見られなかったと推察できる。しかし、過酷な仕事をする刀鍛冶たちを、妻や母親といった女性たちが陰で支えていたことは想像に難くない。彼女たちの活躍を本編で見ることができなかったのは、少し残念である。
多くの謎に包まれた「刀鍛冶の里」。これまで紹介してきたように、里は盤石な防衛システムで守られている。刀鍛冶たちはこの特殊な環境に身を置きながらも、鬼を倒すための大切な武器「日輪刀」を後世へと着実に受け継いできた。
何百年にも及ぶ鬼と人間の長い戦いの中で、「刀鍛冶の里」は幾度となく命の危険に晒されてきたのだろう。だが、彼らはその度に知恵を絞り、新たな手段を講じて里の安全を確保してきたのだ。
盤石な里のシステムは、まさに縁の下の力持ちとして鬼と戦ってきた彼らの血と汗の結晶であり、その過酷な歴史を物語っているといえるのではないだろうか。


